第119話

 ヒトガタは活動を停止した。戦っていた者達は己を今の今まで束ねていた者を、唖然とするように見つめている。

 高校生軍団も、百目鬼家も、陸前家も、同じように動きを止めていた。

 主霊を貫通する、兼代の剣。

 彼に寄りかかるように立つ、レオス・グランディコマンダー。

 そして、息を荒げて肩を上下させる兼代 鉄矢。


「……兼代……鉄矢……」


 レオスは残り僅かな力で、周りを見回した。

 兼代 鉄矢の紡いだ絆――絶望から立ち上がり、進み続けて得たもの。

 ひょっとしたら、自身にもあったかも知れないもの。

 陸前 縁京はふっと、力なく目を閉じた。


「俺は君が……羨ましい……」


 言葉に呼応するように、封印が始まった。

 レオスを形作っていた全てが神器に吸い込まれて行き、ヒトガタ達もまた神器に吸収されていく。

 その全てを吸収し終えた瞬間――歓声が弾けた。


「や……やったあああああ! 兼代が勝った!」

「よくやった! 信じてたぞーーーー!」

「ちょ、待ちな君達! 体に障る! どう見ても満身創痍じゃない!」

「何だよドーメ! お前だってにやにやしてんじゃねーか!」

「いや、そりゃそうでしょ! でも、今は駄目だってみんな!」


 駆け寄ろうとしたクラスメイト達を制止する百目鬼 灯。

 その背中を見つつ、ただ一人彼に歩み寄る者の足音を聞く兼代。


「……お前のおかげだ。お前があいつを倒してくれたから……ありがとうな」

「お礼には及びませんよ」


 横に腰かける華奢な体を、横目で見やる。

 これは霞む目が見せる幻だろうか。

 陸前 春冬は、静かに微笑んでいるように見えた。


「兼代君から受け取ったものを、ほんの少しお返ししただけです」


 ピスパー・サンクチュガードナー・撃破。

 レオス・グランディコマンダー・撃破。

 陸前家より復活した魔念人、全討伐完了。                         

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