第13話「再会」




次の日。

買い物をするために街へと繰り出した。


晴れた空からは容赦なく太陽が照りつけ、その暑さに肌は汗で濡れていた。

それは拭っても拭いきれず、わたしは拭うことすらやめた。


暑い都会で、できる限り太陽に当たらないように日陰の下を歩く。

それでも暑いことは変わらない。



暑さで項垂れていた顔を上げると遠くに尾崎先輩が見えた。


ついにわたしも暑さで脳ミソがおかしくなったのかとさえ思った。

しかし、その考えははずれだった。


徐々に近くなってきた先輩と目が合う。

その瞬間、先輩は足を止めた。

こちらをじっと見てから、逃げるように踵を返す。


わたしは思わず走り出した。



「先輩っ」



髪が乱れるのも、汗が流れるのも気にしなかった。

気になっていた人の姿を見て、一心不乱に背中を追う。


「待って、お願いしますっ」



去っていく背中に叫ぶ。

人波をかき分け、一向に縮まらない間を埋めようともがく。



「話をさせてくださいっ」



そう叫んだ直後、わたしは人とぶつかりバランスを崩した。

膝から地面へと倒れ込む。

アスファルトに直撃した膝はジンジンと痛み、すぐには立つことができなかった。


はっとして顔を上げる。

けれどさっきまで見えていた先輩の姿は見当たらず、わたしは地面を見つめた。


膝が赤くなり、微かに血が滲む。

幸いスカートは膝より上の丈だから血はつかないだろう。

わたしは人々が通り過ぎていく中で、立てずにいた。


すると人影がわたしに近づいた。



「大丈夫?」



頭上から降ってきた声にわたしは思わず顔を上げた。

天を仰ぐように顔ごと視線を上に向ける。

そこにはさっきまでわたしが追いかけていた尾崎先輩がいた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る