第11話「うしろ姿」
太陽が空を赤く染める頃、わたしは蓮香さんと別れ、帰路へついた。
ビルの間から覗く朱赤と紫と青のグラデーションでできた空を見上げながら、建物の並ぶ道を進む。
人の多いこの辺りは夕方になっても、暑さがおさまらない。
はたはたと手で仰いだところで涼しくなるわけでもないのだが、仰がずにはいられない。
ふと駅に近づいた時、見覚えのある顔が目の前を横切った。
高校時代、毎日のように見に行っていた。
ーー尾崎先輩。
わたしは思わず彼の方へと振り返った。
制服姿なわけもなく、白シャツにジーンズのズボン姿。高校時代とあまり変わらない髪型。
その背中に声をかけそうになり、わたしは喉まで出かかった言葉を呑み込んだ。
あの時から一度も会っていない。それどころかわたしから避けていたのだ。今更、こんな街中で声をかけるなど、できるはずもない。
尾崎先輩の姿が見えなくなると、わたしは足早に駅へと向かった。
まるで逃げるみたい。
自分の行動がそんなふうに思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます