第11話「うしろ姿」




太陽が空を赤く染める頃、わたしは蓮香さんと別れ、帰路へついた。


ビルの間から覗く朱赤と紫と青のグラデーションでできた空を見上げながら、建物の並ぶ道を進む。

人の多いこの辺りは夕方になっても、暑さがおさまらない。


はたはたと手で仰いだところで涼しくなるわけでもないのだが、仰がずにはいられない。




ふと駅に近づいた時、見覚えのある顔が目の前を横切った。


高校時代、毎日のように見に行っていた。


ーー尾崎先輩。




わたしは思わず彼の方へと振り返った。


制服姿なわけもなく、白シャツにジーンズのズボン姿。高校時代とあまり変わらない髪型。


その背中に声をかけそうになり、わたしは喉まで出かかった言葉を呑み込んだ。


あの時から一度も会っていない。それどころかわたしから避けていたのだ。今更、こんな街中で声をかけるなど、できるはずもない。


尾崎先輩の姿が見えなくなると、わたしは足早に駅へと向かった。



まるで逃げるみたい。

自分の行動がそんなふうに思えた。






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