第4話「佐藤先輩」
あれからというものわたしが部活動を見に行けば、必ずと言っていいほど佐藤先輩が話しかけてくれた。
わたしがバスケ経験者だと語ってからは部活に入らないかと聞かれたこともあったけれど、それは丁重にお断りした。
代わりに、と言っては何だが、練習を見ての感想を尋ねられる事が増えた。
「尾崎ー、次のメニューに進めといてくれ」
試合が終わると佐藤先輩は尾崎先輩に叫び、こちらへと走ってきた。
「今日はどうだった?」
「え、えっと……」
だいぶ期間は経ったと言ってもわたしは部員ではない。
練習を盗み見ているためこの質問をされる度に戸惑ってしまう。
「あの、怪我してる方いません?」
控えめに口に出した言葉に佐藤先輩がきょとんとする。
「ないのなら、いいのですが。その、少し動きが気になる方がいて……」
肩をすぼめ、佐藤先輩を見上げる。
その様子にふっと笑みを零した佐藤先輩は「誰?」と優しく聞いてきた。
「あの人です」と指さすと「ありがとう」と言って佐藤先輩はその人のところへと駆け足で向かっていった。
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