第3話「武装」
それで翌日朝から悪魔崇拝者らしい怪人も住んでいるシェリルのボロいマンションを訪ねたアリアだったが、頼りの先輩は寝ているらしく起きないのでノックをしまくっていると、下の部屋の住民が金切り声を上げてどうやらそれでシェリルは起きたようだった。
「ああおはよう。忘れてたわ。なんかアリアが来る日だったってのは」
「『なんか来る』じゃないわよ。仕事の話」
「そう仕事だ。うちの隊に入ったんだった。じゃあ中へ入りなよ」
室内は酒瓶がごろごろしている。どうやら昨日隊長にもらった金でまた飲んでいたらしい。未開封のゲーム機や新品の書籍、「Nの十五」「RDZの三十一」などと謎の番号が書かれたダンボール箱もたくさんある。
「これ何?」
「さあ知らない、友達が置いてくんだ。しばらくすると別の友達が取りに来る。たまに血だらけの人も入ってくるけどあんまり気にしないよ。ヒルに噛まれただけかも知れないし。それよりこれを着なよ」
シェリルは昨日隊長が着ていたのと同じ、軍服のような外套を手渡す。背中には円と、Vの字を逆さにしたマークを重ねた紋章が描かれており、これが観測兵軍を示す記号のようだ。
着てみるとサイズが大きすぎて、手が袖から出てこなかった。
「それが観測兵の証だよ。それを着てると機嫌が良くなる人と悪くなる人がいる。悪くなる人はぶん殴っとけ……あと武器ね」
シェリルは奥の部屋をがさごそと引っ掻き回し、やや大振りなひどく錆びたナイフと、隊長が持っていたのと同じフリントロック銃を持ってきた。
「それ錆びてるわよ」
「何言ってんのわざとだよ。わざと海水で錆びさせた〈潮の刃〉、これじゃないとファントムを傷つけることはできないんだよ、逆説のトリガーだ。まあでもあんたのトルメンタなら素手でもいけると思うけど。あと観測銃」
「弾丸は?」
「ないよ。弾丸はあんたの内なるファントムに吹き荒れる嵐だから」
「何を言ってるのか分からないわ」
「逐一説明しないよ、あたしも良く知らないから。仕事内容とかも全部見よう見真似でやってるし、正直敵がなんなのか、あたしたち観測兵が何なのかも知らない、けど金がもらえるからいいじゃない」
アリアは渋い顔になった。なんてうさんくさい仕事なんだ。
「私はこれから何をすればいいの?」
「さあ、まずは朝飯でも食べてきたらいいじゃない。あたしは寝る」
そう言うとシェリルは大の字になって寝始めた。外に出ると二つ目の太陽が鈍く輝いている。
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