不思議?な話
仁志隆生
不思議?な話
暑くてムシムシする夜。
俺が自分の部屋で扇風機にあたりながら寛いでると
「う~ら~め~し~や~。どうもお久しぶりです」
いかにもオーソドックス(?)な幽霊が現れた。あ
「あ、あんたはあの時の幽霊じゃんか。一年ぶりだね。てかまだ相手怖がらせていないの?」
「いえ、なんとか怖がらせる事ができました。それで成仏しようかと思いましたが、その前に生前行きたかったなって所を旅してたんです。幽霊だから交通費いりませんしね」
「そうだったんかい。で、今日はその途中で来たの?」
「いえ、もう旅も終わったんで最後にあなたの話を聞きに来たんです。まだ他にもあったんでしょ?」
「うーん、怖いのはもうあんまりないよ。後は不思議っぽいのかなあ?」
「はい。どんなものですか?」
「えーとね、四歳か五歳の時だったかなあ。俺が家の前で遊んでると地面に何か大きな光る穴があったんだよね。で、何だこれ? って覗いたら何故か穴に落っこちちゃって」
「どうなりました?」
「気がついたら自分ちの中だった。あれ、夢だったのかな? と思ったけど足を見ると靴履いたまま……うーん、はっきりと覚えてないからそこまでが夢だったのかもしれないけどね」
「もしかするとどこか異世界に行っていたけど覚えてないとか。もしくは元いた世界からワープしてきたとかじゃ?」
「子供の頃はそんな事も考えたけど、今は流石にねえ」
「そうですか。あの、他には?」
「うーん。全然怖くないけどさ、小学生の頃だったかなあ、お菓子のおまけでちっちゃいガ◯プラが入ってるのが売ってたんだけど、それ外からは何が入ってるかは見えなかったんだよね。それを五回連続で中に何が入ってるか当てた事ある」
「そ、それは凄いですねえ」
「うん。俺くじ運はそこそこあると思うんだよ。当たり付き自販機は平均すると今でも月に一度くらい当たってるよ。毎日買ってるわけでもないのに」
「私なんて生前自販機で一度も当たりになった事ないですよ。凄いじゃないですか」
「そう? もっと当てている人もいそうだけどなあ」
「いたとしても会った事はないですねえ」
「はは。さて、他のは……これはまあ、単なる思い込みに聞こえるだろけど」
「いえ、よければどうぞ」
「それじゃ。俺って小学生の時よく悪夢にうなされてたんだよね」
「それはまた何故?」
「うーん、たぶん。で、風邪ひいたらそれが言い表せないくらいのものになってね、ほんと寝るのが嫌なくらいだった」
「へえ……」
「そしてまた風邪ひいて学校休んでた朝、テレビ見たらポン◯ッキやってたんだよ。普段なら登校時間で見れないからちょっと嬉しかった」
「ああ、私も生前見てましたよ」
「なら知ってるかな? 歌でピンクのバクってのあったの」
「はい。あれってたしか」
「うん。バクが怖い夢や嫌な夢食べて最後お腹壊したって。それ聞いて可哀想だって大泣きしちゃったんだよね」
「ああ、それわかりますよ。それで?」
「うん、不思議なんだけどその後は悪夢にうなされる事がなくなったんだよね」
「もしかすると、そこまで泣いてくれたあなたの為にバクさんが」
「あんたもそう思う? 俺もあのピンクのバクが悪夢を、何てアホみたいな事今でも思ってるよ」
「いやいや、きっとそうですよ」
「うん、ありがと」
ありがと、バクさん。
「さてと、他にもあるけどどうする?」
「話して差し支えないものは全部聞きたいです」
「それじゃ。えーとね、俺が生まれる前に亡くなったはずのひいじいちゃんを見た事があるんだよね」
「へえ、どこで?」
「俺が三歳の時にひいばあちゃんが亡くなったんだけど、その枕元に立ってたよ」
「ああ、お迎えにいらしてたんですね」
「たぶんね。で、小学生の時にひいじいちゃんあの時いたよねって家族に言ったら驚かれた」
「ご家族も信じてる方なんですね」
「うん、結構ね。後は中学二年の時、じいちゃんが亡くなる夢を四回も見たんだよ。そして最初に見てから一月後にじいちゃんが倒れて病院に担ぎ込まれ、さらに一月後に亡くなった」
「それはまた当たって欲しくない予知夢でしたね」
「うん、それにそんな夢見たのって俺だけだったんだよね。他の誰もわからんかったらしい」
「何でまたあなただけに見えたんでしょうね?」
「さあねえ。後は俺が二十歳の時に親父が」
「あ、お父様ももう亡くなられてたんですか」
「四十六歳だったよ」
「それはまたお若くして……」
「ああ。で、その親父が亡くなるひと月前から妙な胸騒ぎがずっと続いてたんだよね。亡くなった後であの時気づいておけば、じいちゃんの時みたいな夢を見て病院に無理矢理にでも入れとけばもしかしたらと、一年くらい立ち直れなかった」
「……何て言えばいいか」
「あ、ごめん。今はもう大丈夫だから」
「そうですか……」
「さてと、後はこういうのは?」
「どういうのですか?」
「えーと、以前飲み会で酔っ払って気がついたら知らない場所を歩いてた。スマホで現在地を調べたら家と反対方向でかなり離れた場所だった。どうやってそこへ行ったのかも全く思い出せなかったよ」
「それはある意味怖いですね」
「うん。で、運良くタクシーがいたのでそれで家に帰ったよ」
「お酒は飲んでも飲まれるなですよ」
「そうだね、気をつけます」
「さてと、こんなもんだけどいいかな?」
「はい、もう思い残す事はありません。これで成仏します」
「そうか。じゃあ俺坊さんじゃないけどお経あげさせてもらうよ」
「ありがとうございます。それじゃお元気で」
そう言って幽霊は姿を消した。
俺は手を合わせてお経を唱え、幽霊の冥福を祈った。
終
※ この物語は幽霊との会話以外はやはりほぼ実話。
不思議?な話 仁志隆生 @ryuseienbu
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