命の売買

@yukiemon

第1話

黒のフードで表情を隠している怪しい風体の老爺と、ボロを着た浮浪者の様な壮年の男性。


「あなたの寿命を買いましょう」


「病に冒され、家族もいない。ホームレス生活で、このままですと首を括るしかないと思っていたのです。値がつくのであればお願いしたい」


「承りました。こちら代金です」


「ありがとうございました。残りの人生悔いなきように過ごします」



翌日、老爺と身なりの良いふくよかな男性。


「ここで寿命が買えると聞いたのだが?」


「勿論で御座います。ここでお間違いありません」


「健康で家族円満。仕事も順調で友人にも恵まれている。もっと長生きがしたいんだ。金に糸目はつけないぞ」


「そうですか。あいにく20年分しか在庫がありませんので。何年になさいますか?」


「全部頂こうか」


「ありがとうございます、またのお越しを」


老爺一人。


「寿命を買うということが、どういうことか理解して無かったご様子でしたね。


他人の人生の続きを肩代わりする事になるということを。


本来の寿命が尽きた後、現在の恵まれた生活から急転直下、路上生活者の生活に叩き落とされるということを。


まあどうでもいいですが。

お代だけ頂ければ私は満足です」



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