第20話『メニューを考えよう ②』
一つ目のメニューのホットケーキを考え、次は何にしよう。カフェといったらパフェとかゼリーもあるのかな?私あまり行った事ないからわからないけど、どうなんだろう。
「メル、お前なら何か良い物知っているんじゃないか?」
ガイルさんがメルちゃんに話を振る。
「んー、じゃあ【プリン】とかどうでしょう?」
「プリンか・・・また高級な物をもってきたな・・・」
プリンなら知っている。私の様な庶民でも作れるほど一般的なデザートだ。でもこの世界ではプリンの様に甘い話ではないみたい。
「え?高級なんですか?」
メルちゃんは首をかしげて聞いた。正直私もプリンを二日に一回くらいは食べていたので、驚きを隠せない。
「そりゃあ材料が非常に取りにくいからだよ」
マミさんが話をし始めた。
プリンに必要な材料は
卵・牛乳・砂糖・バニラオイルの四つだけど、マミさんの話によると、そのバニラオイルを作るためのバニラが手に入りづらいらしく、南の湖にいる魔物が落とすらしいが、その魔物と戦う人がほとんどいなくて取りづらい材料になっているらしい。しかし戦う人がいないとはどういうことだろう。何か理由があるはず。というか何でマミさん知ってるの?
「それは後で行くとして、あと一つ欲しいな」
「パフェはどうでしょう?果物とホイップクリームさえあればできますよ」
パフェって難しそうなイメージあるけど、材料を聞いてみるだけだと結構簡単そうに思える。でもパフェならアイスも欲しいなぁ。
「バニラオイルってマミさん作れないの?」
「バニラオイルは自然なものに近いから作るのは無理かもなぁ」
自然なものは作れないっていうのはちょっと不便そうだけど、その悪い部分を見なければ良い事だらけな気がする。言い換えると、人間の手が加えられたものは何でも作れるって事だからね。
「そっかぁ、じゃあバニラ取りに行こう?なつめ」
「あ、うん!」
切り替えが異常に早いのは前々から知ってはいたけど、改めて早いと思った。
「あ、暇だから私も行きたいです」
と、マミさんが手をあげて言った。マミさんがいるなら百人力だ!ってこの言葉言った事あるようなないような・・・ま、いっか。
「そうか。俺は店に残ってコーヒーの事考えるとするよ。気を付けていくんだぞ」
「「はい!」」
大きな声で返事をした。
マミさんとメルちゃんはそれぞれ探偵服と魔法使いの服に着替え、私はレベルが5になっていたので新しい装備に。膝丈のピンク色のスカートに白い服、それに下に猫ちゃんの刺繍がついているエプロン・・・ってこれ私が家で使ってたエプロンじゃん!(武器はまだレベルが足りないみたいで変更できませんでした。でもお気に入りなのでオッケー!)
ガイルさんに見送ってもらい、三人で酒場を出て南の湖を目指す。その前に南門まで歩かなきゃいけないのはつらいなぁ。でも、少し町の景色を楽しみ話しながら行くってのもありかも。それにこのパーティ初めてだし、色々聞きたい事もあるし!
「マミさんって何処から来たんですか?」
マミさんはいきなり聞かれて戸惑っているみたいだった。
「あ、えっと、私は『レニパ』という大陸から来ました」
「レニパ・・・ってどういう所なんです?」
「・・・それは」
マミさんが何かを言おうとした時、南東で悲鳴が聞こえた。
「ま、魔物が町の中に!」
魔物が町の中になんて、そんなとんでもイベントもあるの!?しかし魔物が出たとしたら町の人が危ない!今の時間は特に、冒険者さんが依頼や討伐でほとんどいないから、暴れ出したら止めようがなくなってしまう。
私たちは走って現場に向かった。多くの人が私たちの走っていく方向と逆に走って逃げていく。お店にいた人もみんな逃げ回っている。
叫び声をあげて逃げていく人もいれば、目を瞑って必死に前に前に走り逃げる人もいた。
私たちはこの中を掻き分けて進んだ。
「あれは・・・!」
小さい広場につくと、黒くて顔がよく見えない人型の魔物が一体いた。その魔物の前には男女のカップルらしき人たちが襲われている。
くぅ、今すぐ爆発させてやりたい気分だ。でも今はそんな素晴らしい事している余裕はない。とりあえず助けてそれからやらなきゃね!
「こ、こっちにくるな!」
カップルの男性が彼女と思わしき人を後ろにし、守っているみたいだ。しかし、お構いなしに黒い魔物は近づいていく。
何かを言いながら。
『さっキから見てリゃァ、仲良サソうにイチャイチャイチャイチャしヤガッて・・・イラつくンだよォオ!』
黒い魔物はそう言うと、男性に襲い掛かる。その気持ちは分からなくもない。でもだからって、自分の欲のままに人を襲うのはよくないと思う。
取っ組み合いになってるみたいだけど、魔物らしい攻撃はしていない気がする。そもそもあの人型の黒い者は魔物ではなく、さっきまで普通の人だったのではないだろうか?そんな感じの事も言っていたのだし。
もしその人が悪い心を持った魔物と化してしまったのならば・・・
「人の悪心を利用し魔物に変える魔物・・・か・・・」
マミさんが何かを創り出した。そして私たちを置いて、一人で黒い人型の魔物に近づいていった。
「人間の欲に漬け込みその者を魔物と化す邪悪な根源・・・」
マミさんが右手に持っていたものは槍だった。それも神々しい光りを放っている。
そして槍を構え、黒い魔物に尖った先端を向ける。
まるで人が変わったみたいに妙な笑みを浮かべていた。
「マミさん!その人は・・・!」
「もちろん知っています。心配はしなくて大丈夫です」
そう言うと、硬い地面に光の槍を突き刺した。
「闇を吸って」
光の槍から光が放出され、黒い魔物の周りに纏わりつく。そして黒い魔物を包み込み、闇を奪っていき、闇が消えたかと思うと光が突き刺さっている槍に戻った。黒い魔物の正体は普通の人間の男性で、気を失い地面に倒れた。
さっきまで取っ組み合いをしていた男性は彼女と怯えながらその場から去って行った。
マミさんは光の槍を地面から抜き、槍の光を
自分に注ぎ込んだ。全て吸収し終えたと同時に光の槍が消滅し、マミさんが振り返らずにその場で話した。
「さっきの話の続きです。・・・ニレパは希望の光もない、悲しい悲しい大陸ですよ」
笑顔ながらも、その水色の目は微かに涙ぐんでいて、悲しみと喜びを合わせたような複雑な表情を浮かべていた。
「さて、気を取り直して湖に向かいましょう」
と、マミさんは服の袖で涙を拭いながら言った。
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