第8話 ツチノコっていると思う?
どういうわけか、ここ最近は部長と共に通学している。
行きも帰りも一緒で、いったいどういうつもりなのか尋ねると
「この間UFO仲間から君と一緒に行動していると遭遇率が上がるって言われてね。遭遇できるまでしばらく一緒に登下校させてもらうよ」
との事だった。
はっきり言って部長と僕の家は正反対だ。なので、僕と一緒に通学するということは一度学校を通り越してわざわざ僕の家の前まで来るということだ。
「効率悪すぎません?」
「UFO遭遇の可能性の為なら何でもするよ」
そういいだしたら部長は聞かない。何を言っても無駄なのだ。
「そもそもUFOに遭遇してどうするんですか?写真でも撮って懸賞金でも貰うんですか?」
今時懸賞金をくれるところがあるのかは疑問だったが……
「未知との遭遇というのはね、いつでも心躍るものなんだよ」
「だったらまだツチノコのほうが可能性あると思うんですけど。ほら、学校の裏側って山になってますし、妙な生き物がいたって話も聞いたことありますよ」
学校の裏に幽霊が出るといううわさ話を追跡しているときに入手した情報だ。猫のようだが手足がない、蛇のようだが、大きさがいびつだ、などと噂される生き物が存在しているらしい。
はっきり言ってそういう生き物は管轄外なので、まともに調べようと思ったことはないけれど、部長は僕の話を聞いて目を輝かせた。
「じゃあ、今日の放課後はツチノコを捕まえよう!裏の山に集合だよ!」
「えええ……」
こちらがイヤそうな顔をしても部長はお構いなしだ。
「捕まえたら賞金半分分けてあげるよ」
そういってツチノコにかけられた賞金を見せてくれた。
なんとその金額1億円。僕は目を疑った。
「これ、本当なんですか?!」
「これだけ大きく歌っていて、嘘だなんていう訳ないよ!ね?やる気出たでしょ?!」
「部長、頑張りましょう!きっと『つちのこは裏山にいますよ!』ね?」
いけない、あまりに食い気味に話しに乗っかった所為だろうか。部長が若干引いている。これはよっぽどのことだ。
「あ、ああ。そうだね!じゃあ放課後また会おう」
どこか様子がおかしい部長に不信感を覚えつつも、すでに僕は賞金をどう使おうかという夢のような事を考えていた。
結論から言えば、それらしい生き物には遭遇した。
確かに妙な生き物は存在していた、しかしそれを捕まえる事は出来なかった。
正確には逃げられてしまったのだが、裏山の敷地内では割と大人しいのだが、敷地を出ようとすると激しく抵抗し、逃げられてしまうのだ。
目も鼻もない、蛇のようなぬるっとした大き目な生き物。おそらくツチノコと思しき生き物はかたくなに山から離れようとしない。
「悔しいなぁ、ここに居るのに。連れていければ賞金……」
「まぁ、仕方がないさ。裏山から出たら死んじゃうのかもしれないじゃないか」
「そんなことありますか?」
肩を落とす僕とは違い、UMAを見て触れることができた部長は満足したようでニコニコしていた。
「環境が変わればストレスで死んじゃうだろう?ペットだってそうだし、UMAなんて人と触れ合う事のない生き物だとストレスは半端ないだろうからね。
本能的に感じたんだろう」
成程、確かに環境が変わればそれに対応できない可能性は十分考えられる。
死んでいても賞金は出るらしいが、でもどうせなら生きたままとらえ、後で山に返してあげたいと思っていたのだから大人しく諦めるべきだろう。
「ツチノコの事は諦めます。でも、付き合ったんですから肉まんの一つくらい奢ってくださいよ?」
「ああ、分かった。それくらい奢ってあげるよ」
部長は足早に裏山を後にする、僕もあわててその後を追いかけた。
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