第12話 アース

地球が揺れている。人間の愚かな行いで放射能の霧に覆われ生命が死滅していき、放射能生命体レディオアクティビティクリーチャという新人類が現れた地球。新たに奇跡の谷で水と緑の溢れる美しい地球に再生を始めたのだったが、その存在が揺らいでいた。

放射能人間レディエーションヒューマンの男性飛鳥と一条陛下の戦いの場に飛鳥とさくらの娘の愛子が現れた。



「お父さん!? お母さん!?」

男性と女性の娘が必死な表情で一生懸命に走って向かって来る。自分のお父さんとお母さんが傷つき座り込んでいる姿が見えたからだ。お父さんとお母さんを助けたいという子供ながらの強い思いだった。

「愛子!?」

男性は娘の登場に驚く。娘が危険な場所に来るのが父親として心配であるのと同時に陛下に秘密が知られることも心配であった。

「愛子!? 来ちゃダメ!?」

女性も可愛い娘の心配をする。そして男性と同じく陛下に娘の存在が知られたらどうなるのかが心配であった。

「お母さん!? 大丈夫!?」

娘は母親の女性に駆け寄る。なぜか母親の体は薄く透けているように見えた。娘には母親の女性が傷つき弱っているように感じた。娘と一緒に来た精霊たちも体が剥けているように見える。

「私は大丈夫よ。愛子、逃げなさい!」

女性は自分のことを心配してくれることよりも、娘に無事でいてほしくて、危険なこの場から逃げてほしかった。

「やだ! お母さんとお父さんを残して、私だけ逃げれる訳ないでしょ!?」

娘は母親と父親が心配なので、母親である女性に反発する。

「お母さんとお父さんは愛子が守るんだ!」

娘は母親から離れ陛下の方を向いて睨む。お父さんとお母さんが傷ついて苦しんでいるのは、きっと目の前のこいつが原因だと感じたからだ。

「お嬢ちゃん・・・何を言っているんだ!?」

陛下は小さな女の子の登場にも驚いたが、もっとも驚いたのは小さな女の子が男性のことをお父さんと呼び、女性のことをお母さんと呼んだことだった。

「飛鳥とさくらがお父さんとお母さんだと!? 嘘を言うな!?」

陛下は放射能に汚染された人間から子供が生まれるとは思っていなかった。それに、もし生まれたとしても奇形児か何かになり普通の子供にはなれないだろうと思っていた。

「嘘じゃないもん! 愛子はお父さんとお母さんの子供だ!」

娘は陛下の異様な姿にも臆することなく、ただお父さんとお母さんを助けたいという想いが小さな女の子に勇気を与えている。

「クウッ!? そこの警備隊員! その女の子の言っていることは事実なのか?」

陛下は娘と一緒にやって来た隊員の氏家に怒鳴り口調で尋ねる。小さな子供の言うことなど信じることができなかった。自分の愛する女性が子供を産んでいたなどと信じたくなかったのだった。

「はい! 陛下! 事実であります!」

隊員は陛下という肩書きの権力と強い口調にビビり素直に答える。

「で、では本当だと言うのか!? さくらが、さくらが飛鳥の子供を産んだというのか!? そ、そんな!? 信じられん!?」

陛下は信じられないのではなく、信じたくなかった。放射能に汚染されて放射能汚染防止シールドの外の世界に捨てられる男性を追っていった自分の愛する女性が、まさか放射能の霧の世界で男性と共に生き残っているだけでもビックリなのに、子供までいるというのだ。

「な、なんだというのだ!? 何が起こっていたというのだ!?」

陛下は乱心する。本当は放射能の世界で放射能に汚染されて死んでいたであろう男性と女性。しかし2人は生きていた。そればかりか子供まで授かっている。放射能汚染防止シールドの中の日本国で平和に暮らしていた陛下には、外の世界で2人に何があったのかが、まったく理解できなかった。

「いいだろう。全て話そう。」

男性が立ち上がっており、女性と娘の方にゆっくりと歩いて行く。

「ダメよ!? あなた!?」

女性は全てを話そうという男性を止めようとする。

「もういいだろう、さくら。君も人間の欲望に満ちた汚い心に触れ過ぎて汚染され、俺を維持できなくなっている。そればかりか見たいと言っていた、水と緑の溢れる美しい地球を再現することもできなくなっている。俺たちは、そろそろ限界が来たんだよ。」

男性は現状の自分と妻である女性の状態を冷静に語る。

「そ、それは・・・。」

女性も男性の言っている意味を理解した。権力とお金に塗れた人間の地球すら滅ぼしてしまう私利私欲の汚いものに触れ過ぎてしまったのだ。女性のきれいな心を汚したのは放射能でもない。人間の邪な心だった。

「お父さんとお母さんは何を言っているの?」

娘には父親の男性と母親の女性が言っている言葉の意味が分からなかった。

「愛子。おまえは確かにお父さんとお母さんの子供だよ。」

男性は娘の頭を手でポンポンしながら優しく話す。

「当たり前だよ。」

娘は少し照れているが嬉しそうだった。

「でもね。愛子を生み出したのは、お父さんとお母さんの意志なんだ。」

子供とは男性と女性が愛し合って、お母さんのお腹の中から生まれてくるものである。それなのに男性は娘の出生は自分と女性の意志だという。

「え?」

娘は、まだ小さいのでお父さんの男性が何を言っているのか分からなかった。

「お父さんとお母さんは放射能に汚染されて子供を作ることができなかったんだ。でもお父さんもお母さんも子供が欲しいと思い続けたんだ。そして願い続け形になって生まれたのが愛子なんだ。」

娘の出生の秘密。それは母親である女性が生んだのではなく、男性と女性が子供が欲しいという意志が生み出したというのだ。

「そうなのよ、愛子。お父さんもお母さんも、愛子が生まれてくれて、すごく嬉しかったのよ。」

女性も目から涙をこぼしながら笑顔で娘に優しく笑いかける。

「んん・・・愛子、子供だからよく分からない。」

娘は父親と母親の言うことが難し過ぎて理解できなかった。

「でも愛子はお父さんとお母さんの子供で幸せだよ。」

娘は傷つき弱っている両親に幸せそうに笑いかける。

「愛子、ありがとう。」

母親の女性はうれし涙を流しながら可愛い娘を力強く抱きしめる。その様子を男性も幸せそうに見つめている。

「うう・・・。」

隊員ももらい泣きをしている。

「い、意志!? 意志などで子供が生まれるだと!? そんなことがあるものか!? あってなるものか!?」

陛下の乱心はますます進む。一度にたくさんの衝撃的な真実が語られて、陛下は放射能人間レディエーションヒューマンを保てなくなりそうだった。自分の愛していた女性が自分を裏切っている。それが陛下の一方的な思いだとしても・・・。

「ゴホゴホ。」

その時、娘が咳をする。意志で生み出したと言われた娘が咳をしている。

「愛子、大丈夫? まさか放射能に汚染されたんじゃ!?」

娘の咳を母親の女性が心配して、娘の額に手を当てる。。

「大丈夫だよ。咳ぐらい。」

娘は強がりを言うが体は少し熱を持っていた。

「意志で生まれたものが咳をするだと!? ・・・まさか!? まさか!? 飛鳥が遺伝子研究所から盗み出した遺伝子データは、自分たちのためではなく!?」

陛下は男性が日本国の遺伝子研究所から盗み出した男性と女性の遺伝子データーの使い道は男性が女性を甦らせる、若しくは男性が自分の体が痛んでいるので回復か修復するために必要なのだと見当していた。

「愛子のためだ。」

男性は自分が遺伝子データを手に入れた目的は可愛い娘のためだと言う。

「娘に体を与えてやるためだ。」

男性と女性の意志で生み出された娘。その娘に生きてほしかった。娘に人間として生きてほしかった。男性は父親として、女性は母親として、我が子の人間としての幸せだけを願った。

「バカな!? そのためだけに危険を顧みず遺伝子データを盗んだのか!? 放射能に汚染される前の遺伝子データがあれば、おまえやさくらも放射能に汚染される前の体に戻ることもできただろうに!?」

他人のことより自分のことを中心に考えてきた陛下には理解できない感情だった。

「一条、おまえにも子供がいれば分かるさ。自分よりも子供の幸せを考える親の気持ちが。」

親にとって子供は目に入れても痛くない存在なのである。それを実感している男性と女性。それが分からない陛下との差である。他人に優しくなる、優しくできるというのは子供を授かって初めて理解できるのかもしれない。

「俺の好きな女を奪い、死んだと思ったら放射能の霧の中で子供までいて、親子3人で楽しく家族ごっこしていただと!? 俺が、俺が日本国の中で好きな女を失い、友を放射能に汚染させたことを日々苦しんで生きてきたのに、おまえたちは幸せに暮らしていただと!? なんということだ!? ふざけるな!? なんなんだ!? なんなんだ!? 飛鳥!? おまえはいったい何なんだ!?」

陛下の乱心が進み、体を維持できなくなってきた。陛下の体が大きく膨れ上がっていく。そして異様な姿になろうとしている。陛下は人としての心を失い放射能人間レディエーションヒューマンから放射能生命体レディオアクティビティクリーチャになろうとしている。

「何!? あれ!? お母さん!? 怖いよ!?」

陛下は狂い人間から化け物に変化していこうとしている。これが人間が水と緑の溢れる美しい地球を壊してしまった諸悪の根源の姿なのかもしれない。権力とお金、自己中心的な考え方、自分に理解できない者は排除するなど人間の本質がある。美しい物を生み出すことができる人間。しかし逆に汚れた者を生み出してしまうのも人間。

「一条が人ではなくなっていく!?」

男性は放射能生命体レディオアクティビティクリーチャの誕生の瞬間を初めて見た。確かに目の前で起こっている光景は強欲な人間の行きつく果てなのかもしれないと感じた。恐怖という感情より、1人の友が人間でなくなっていくことに、どこかで寂しさや悲しみのようなものを感じていた。

「大丈夫よ!? 愛子だけはお母さんが何があっても守るからね!?」

女性は可愛い娘を守るためなら自分の命が尽きようとも構わなかった。自分の意志で子供が欲しいと願い生み出した娘。そして体を与えたいと願い人間の体を与えることに成功した。自分の存在を娘に引き継いでいく、自分が生きていたということを可愛い娘が覚えていてくれているだけで女性は幸せなのだった。

「ホロボス・・・コンナ・・・ウソバカリノセカイ・・・ジブンノオモイドオリニナラナイセカイナド・・・ホウシャノウニオセンサレタセカイナド・・・ホロビレバイインダ!!!」

完全に陛下は人間ではなくなった。容姿は人間が権力とお金でブクブク太ったような豚野郎になり果てていた。人間から放射能人間レディエーションヒューマンへ、そして放射能生命体レディオアクティビティクリーチャになる。人の心の移り変わり、人が何を望んだのか、人が何を願ったのかで未来は変わるのかもしれない。人の数だけ、願い事の数は増える。

「飛鳥。いままでありがとう。」

女性は男性を見つめる。まるで最後の別れを覚悟したようだった。

「さくら!?」

男性は女性の言葉に不意を突かれたように感じた。放射能汚染防止シールドの中でも、放射能の霧の中でも、いつも側にいてくれた女性だったから。女性の言葉に嫌な予感を感じる。

「ホロボス!!!」

陛下は放射能生命体レディオアクティビティクリーチャの化け物として男性たちに突撃してくる。

「愛子。いままで楽しかったよ。」

女性は可愛い娘にも最後に一言だけ笑顔で言い残す。その女性の表情は幸せそうだった。

「お母さん!?」

娘も男性と同様に不意を突かれたように戸惑うしかできなかった。

(地球よ、美しい地球。どうか娘の生きていく、この世界を救ってください!)

女性の意志が地球に問いかける。地球が女性の問いかけに応えるように、女性の体が光り輝く。

「ホロ・・ボ・・・!?」

女性から放たれる光は放射能生命体レディオアクティビティクリーチャになった陛下を一瞬で、この地上から消し去る。まるできれいな光が地球を汚す者を排除するように。

「お、お母さん!?」

幼い娘には何が起こっているのか分からなかった。母親である女性が光り輝き光を放つ。その光は地球全体を純粋できれいな光が包む。

「愛子。」

今度は父親の男性が可愛い娘の名を呼ぶ。

「え!? お父さん!?」

名前を呼ばれ父親の方へ振り向いた娘は、体は透けて母親と同じように光り輝こうとしている父親の姿を見る。

「お母さんは地球になったんだよ。愛子がこれから生きていくために、愛子を見守るために地球の一部になったんだ。」

男性は娘に母親である女性が娘が生きていく地球になったと言う。

「え!? お母さんが地球に!?」

突然過ぎて娘にはまったく理解できなかった。

「お父さんはお母さんの意志で存在を維持していたから、お母さんがいない世界では存在を維持することができないんだ。本当はお父さんもお母さんも放射能に汚染されて日本国から捨てられた時に放射能に汚染されて死んだんだ。でも、お父さんはお母さんのことを想い、お母さんはお父さんのことを想い、お互いの意志で、この世界に留まり続けることができたんだ。」

男性は娘に父親である自分と母親である女性の経緯を話す。そして放射能に汚染されて命が尽き肉体が滅んでも、お互いの意志だけでお互いの存在を認め続けて存在してきたという。

「な、なにを言っているの!? 分からないよ!? お父さんの言っていることは分からないよ!?」

娘は父親の男性の告白に自然と涙がこぼれている。どう受け止めていいのか分からないのだ。

「お母さんは、死ぬ前に一度でいいから水と緑の溢れる美しい地球を見てみたいと願ったんだ。そしてお母さんの意志は水と緑のある美しい谷を作った。それが奇跡の谷なんだよ。」

女性の水と緑の溢れる美しい地球を見てみたいという純粋な意志が奇跡の谷を作り出したのだった。悪しき人間が放射能で汚染して滅ぼした地球に、女性の意志が昔のような美しい自然のある地球を再生しようとしていたのだった。

「そして人間が暮らしていける環境ができたから、次にお父さんとお母さんは子供が欲しいと思ったんだ。お父さんとお母さんはいろいろなことを話し合って、純粋で素直な子、美しい地球と一緒に生きてくれる子供が生まれることを願ったんだ。だから愛子が生まれた時はお父さんもお母さんも涙を流して喜んだんだよ。大好きな愛子。」

男性は娘が誕生した経緯を話す。娘が不安がらないように、男性は娘にお父さんとお母さんに求められながら生まれてきたことをしっかりと話す。

「わ、私!?」

娘はただただ驚くしかできなかった。自分が生まれたとか、体が与えられたとか、幼い子供には正確なことはよく分からなかった。

「愛子、いつも元気に笑って幸せそうに生きてくれてありがとう。」

それでも幼い自分でもわかる。父親の男性と母親の女性に愛されて生まれてきたことを、愛されながら育ってきたことを。

「お父さん、お母さん、いつもありがとう。」

娘は今にも消えてしまいそうな父親の男性に生んでくれて、育ててくれてありがとうと感謝を述べる。

「もうそろそろ行かなくっちゃ。お母さんが1人だと寂しがっているからね。」

男性は大切な娘にお別れを切り出す。

「嫌だ!? お父さんがいなくなったら、愛子、1人ボッチになっちゃうよ!?」

娘は父親と母親との別れを拒む。

「愛子、お父さんとお母さんは地球になって、いつも愛子のことを見守っているよ。だから寂しくないよ。放射能の霧が晴れたら青空が広がるから、空を見上げたら、いつでもお父さんとお母さんに会えるよ。」

男性は可愛い娘に伝説の空の話をする。ここ数百年、放射能の霧が晴れたことはなかったのだ。放射能の霧に覆われていて、空が無い世界だった。

「空?」

娘は空など知らない。青空など見たことが無いのだ。

「氏家。」

男性は娘と一緒に話を聞いて唖然としている隊員を呼ぶ。

「は、はい!?」

隊員はパニック状態であった。自分を助けてくれた男性は実は死んでいて、娘も意志で生み出して、娘のお母さんは地球になった。頭の中が混乱して驚かない方がおかしかった。

「愛子を頼む。」

男性は隊員に頭を下げて娘の面倒を頼む。

「ええ!? 俺なんかでいいのか!?」

隊員は男性が自分なんかに頭を下げて、大切な娘を頼むことに驚く。

「おまえは今のおまえのままでいてくれればいい。それだけで愛子は幸せだ。」

男性は隊員の純粋な心が好きだった。誰かを陥れたり、地球を傷つけたりしない心が。きっと自分の娘も幸せになれるだろうと感じていた。

「飛鳥・・・分かった。俺に任せとけ。」

隊員も男性の心を受け止めて、男性に安心してもらえるように力強く答える。

「愛子、氏家、これからの地球を、水と緑の溢れる美しい地球を頼んだぞ。・・・愛子、幸せになれよ。」

そう言うと男性は光り輝き消えていった。

「お父さん!?」

娘は父親を呼ぶのだが、もう父親の男性の姿はなかった。

(さくら。)

男性の意志は愛する女性の意志の元を目指して飛んで行く。

(飛鳥。)

女性も男性が自分の元に向かってくるのを優しく待っている。

(愛子のことは氏家に頼んできた。)

男性と女性は意志だけになっても再び巡り合う。そして最愛の娘のことを男性が女性に話す。

(そう。少し頼りないけど優しい隊員さんなら、愛子を幸せにしてくれるでしょう。)

女性も娘の幸せを願っている。自分と父親である男性がいなくても、自分の娘は幸せに暮らしてくれると信じている。

(さくら、待たせたね。俺も君の元へ行くよ。)

男性の意志が女性の意志に絡みついて一つに交わっていく。

(来て、飛鳥。私たちが地球になるのよ。水と緑の溢れる美しい地球に。)

男性の意志と女性の意志が光り輝く。

(さくら、ずっと一緒だよ。)

男性は女性に最後の告白をする。

(飛鳥、私も好きよ。)

女性も男性に最後の愛を告げる。男性と女性の2人の意志が光り輝き地球に吸収されて消えていき、地球が輝き始める。

「んん!? 放射能の霧が晴れていく!?」

隊員は放射能の霧で覆われた世界の放射能が消えて晴れていく。隊員が生まれた時から地球は放射能に覆われていて、それが普通だと思っていた。

「なに!? これが放射能の霧が覆っていたモノなの!?」

娘も世界は放射能の霧で覆われているモノだと思っていた。それなのに放射能の霧が晴れていくと青い色をした空が姿を現してきた。これも娘が生きていく世界のことを考え、水と緑の溢れる美しい地球で幸せに暮らして欲しいと願う男性と女性の意志だった。その意志に地球が答えるように、放射能が地球上から消去されていく。

「これが空・・・これが青空なんだ!?」

娘はお母さんに教えてもらった青空の話を思い出す。娘には放射能の霧が覆っていたものが青空だと分かった。放射能の霧が晴れていき、青空が地球を覆っていく。

「奇跡の谷が広がっていく!? 水と緑が広がっていく!?」

隊員は水と緑の溢れる美しい奇跡の谷が地球の放射能に汚染された大地に広がっていく奇跡の光景を眺めている。風や水の精霊たちも楽しそうに放射能の晴れた世界で浮遊して遊んでいる。この水と緑の溢れる美しい自然のある世界が元々の地球だったんだと隊員は素直に思うと目から涙がこぼれてくる。

「地球が甦っていく。」

娘と隊員は歳の差や身長差もあるが、目の前の澄んだ青空が広がり、水や緑だけでなく花の精霊や小さな動物や魚などの新しい命も生まれる奇跡の光景を2人は寄り添いながら見ている。これが娘の父親と母親が娘の生きる世界のために、地球が無くしたものを取り戻し、元の美しい地球の姿を取り戻してあげたい、もう一度、元の水と緑の溢れる美しい地球に戻ってほしいという意志が成し遂げたものだった。


終わり。


あとがき。


おそらく、ここでエンドロールが流れて終わった方が物語がきれいだと思う。ただ1冊10万字と考えた場合、あと1万2000字ほど書かなければいけないので、この話の2000字をあとがき、次の1話を、その後の世界でも書いてみよう。元々、この作品は電子書籍5万字以上20万字以内コンテスト用です。



地球 西暦3000年。


人間は一部の権力者の私利私欲の愚かな行いで核戦争を起こし、地球を青空すら見えない放射能の霧に包まれた世界にしてしまった。

それから数百年の月日は流れても、権力やお金に縛られている一部の豚共のために地球は元の水と緑の溢れる美しい姿を取り戻すことはできなかった。

好きな男性と好きな女性が人類の存続のために自由に愛し合えない時代で、自由に愛し合うために人工的に作られた平和な世界から、自らの意志で放射能の霧の世界へ旅立った男女がいた。

放射能に汚染された人間は生きてはいけなかった。男性も女性も命が尽きてしまうのだが、命や肉体は滅んでも、お互いを愛する想いや意志は朽ち果てることはなかった。

男性と女性の意志は奇跡を起こし、お互いを想いあうことで男性が女性の存在を求め、女性が男性の存在を認めることで、2人の意志は地球に留まることができた。

そして放射能の霧に覆われた地球で願った。「水と緑の溢れる美しい地球を見てみたい。」という想いが、奇跡の谷を作り上げた。

奇跡の谷には、水の精霊や草の妖精などが住まう本来の地球の姿があった。美しい地球には男性と女性が求めた幸せな暮らしが待っていた。

意志だけの男性と女性。それでも人間の意志として、我が子の誕生を願った。命も肉体も滅んでいるのに・・・。

意志の力に限界はなく、男性と女性は諦めることなく、自分たちの子供が欲しいと願い続けた。そして意志だけの存在の可愛い娘が生まれた。

男性と女性は娘の誕生を心から喜んだ。意志だけの親子なのに、まるで本当は死んでいなくて生きているかのように娘を育てて幸せに暮らしていた。

水と緑の溢れる美しい地球を再生するぐらいの素直で純粋な心を持つ男性と女性にも何かを欲するという邪な気持ちが生まれてしまう。

それは娘に体を与えてあげたいという親心だった。親として子供のことを想うことは普通である。

しかし自らの欲望は男性と女性を権力やお金に縛られた人間と同じ豚に少しずつ近づけてしまう。

娘のために私利私欲に走ったために男性と女性の純粋な心が弱ってしまい、水と緑の溢れる美しい地球を再生しようとしている奇跡の谷の拡張が止まってしまう。

娘の両親の男性と女性には、地球の再生よりも娘の幸せの方が大切だった。



う~ん、困ったな。まだ1000字もある!? 本当にあとがきを書くか。

元々、電子書籍コンテストは世界観を示せ的な文章は素人でもOKというものだったので、世界観だけに的を絞り「地球 西暦3000年」になった。地球の西暦3000年などという異世界ではなく「誰も描かない未来」というものを想像するという題材を選んだ。もし、この題材が評価されるのであれば、ラノベ世界はテーマが「未来」の新しいステージのブームが来るだろう。素人であろうがプロであろうが出版社にコネが無かろうが、世界観を想像できたものが拾い上げてもらえるのであれば。一番情けないのはプロ契約作家と出版社が素人からアイデアだけ盗むというものである。「地球 西暦3000年」には悪しき風習が無くなっていることを希望する。


この物語は2020年の東京オリンピックがあるという未来から始まり、その後の未来の世界観だけの緩い物語、若しくは伏線だらけの始まりであった。現在で10万字に約1万字も足らないと考えると、スタート時にもっと世界観と設定を考えてから書きだすか、今から世界観と設定を見つめ直して、全て書き直すという選択肢である。確かに次話で1万字を「その後の世界」を描くとなると流れの世界観というよりも、新しい1万字の作品を書くということになるのは、現在、構想がまったくないので、過酷な妄想作業になる。壮大なスケールで10万字クラスの作品をかくとなると一つの設定で全てが決まってしまう。小細工10万字作品的な手直しが素人作家の自分にはできないだろう。


まだ300字ある・・・。電子書籍コンテストは5万字以上なので、このあとがきは投稿する必要がない。どうせ出版社は読まないだろうし、ここまで無名素人の作品を読む者がいるとしたらクレーマーだけだろう。とりあえず途中で放棄することもなく、ダラダラと字数を稼ぐこともなく、素人作家としてはきれいなところで本編を終えることを選んだことは満足かな。

次話で最後の1万字を書いて10万字を書き終えるのだが、その後の話を書いていくとなると無難なのは子供が大人になり、先祖の話を子供に伝えるという展開か・・・。ありふれているがヒット作も同じような展開ばかりで無難に延命している作品ばかり・・・。でも売れたり映画化とかした場合の2巻や続編の可能性になるだろうから、頑張らなくっちゃ(⋈◍>◡<◍)。✧♡


終わる。

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