第8話 バース
日本国の放射能汚染防止シールドが放射能生命体レディオアクティビティクリーチャによって壊された。それにより下山手の内部に放射能の霧が入っていった。平和に暮らしていた人類は放射能に汚染され混乱する。
放射能人間レディエーションヒューマンの男性の飛鳥は、その混乱に乗じ下山手内部にある皇居の放射能汚染防止シールドの内部に侵入する。そして目的の物を手に入れて、愛するさくらと愛子のいる奇跡の谷に帰ってくる。
「手に入れたぞ。俺とさくらの遺伝子チップ。」
自宅に男性と女性の2人がいる。辺りは夜で愛子はもう眠ったのだろう。
「ついに手に入れたのね。私たちが放射能に汚染される前のデータを。」
女性も少し興奮気味だった。まさか手に入れることができるとは思っていなかったのだ。
「これで何でもできるぞ。これで君を・・・。」
男性が自分と女性の遺伝子データを見ながら何か言おうとする。
「いいえ。私たちがすることは1つだけよ。全ては愛子のために。」
女性が男性の言葉を途中で遮る。男性は何が言いたかったのだろう。そして女性の言う望みは1つだけとはいったい何なのだろうか。娘のためとはいったい。
「分かった。じゃあ、愛子を連れてくるよ。」
男性は娘を連れてくるために娘の寝ている部屋に向かった。そして娘の部屋の扉を開ける。
「ん!? 愛子がいない!?」
娘の部屋には娘がいなかった。ベットに娘は寝ていなかったのだ。
「さくら!? 愛子がいないんだ!?」
男性は娘がいないことを女性に伝える。
「何ですって!? すぐに愛子の意志を追うわ!?」
そう言うと女性は瞳を閉じて、精神を統一して娘の意志を追う。女性には奇跡の谷の各場所の映像が心に映し出される。娘の意志を感じようとしているのだ。それでも奇跡の谷の全域を創作しても娘の意志を感じなかった。
「ダメ!? 谷の中にいないわ!?」
女性は娘の意志を感じることができなかった。娘は奇跡の谷の中にはいないのだった。女性の意志が谷の中で娘の意志を感じることができないということはないのである。
「分かった! 外に探しに行って来る!」
男性は女性にそう言うと、駆け足で奇跡の谷の外に娘を探しに向かう。
「愛子をお願いね!」
女性は男性の後ろ姿を娘の心配をしながら見送った。きっと男性なら見つけてくれるだろう。きっと娘は無事だろうと祈った。
ここは放射能の霧に覆われた森の中。
「いくぞ! 氏家!」
男性と女性の娘の愛子と日本国の警備隊の氏家隊員が放射能の霧の中を歩いていた。
「はあ・・・トイレをするために起きただけなのに・・・、待ってよ!? 愛子ちゃん!?」
隊員は夜中にトイレに行きたくなって目が覚めた。すると眠っている精霊さんをお気に入りのリュックサックに4、5体ほど詰め込んでいた。
「愛子ちゃん? 何やっているの?」
隊員は思わず声をかけてしまった。夜に小さな女の子が不審な行動をとっていれば、正義感の強い隊員としては知らんぷりはできなかった。
「し~っ。お外の世界を見に行くの。」
娘は口に人差し指を当てて、隊員に静かにするように促す。そして昼間お父さんの男性とお母さんの女性が言っていた、地球が青かったというのを確かめに行こうとしていたのだった。子供の好奇心に火がついたのだった。
「愛子ちゃん、もう帰らない? お父さんとお母さんが心配しているよ。」
隊員は両親が心配していると家出娘に帰宅を促す。
「嫌だ! 愛子は帰らない! いくぞ! 氏家!」
娘は放射能の霧の怖さを知らないので意志が強かった。娘は精霊をリュックサックに詰め込んできたので大丈夫だと思っている。何かあったら精霊が助けてくれると信じていた。
「谷の外には怖い化け物とかいるんだから。愛子ちゃん帰ろうよ。」
隊員はなんとかして娘を説得しようと試みる。
「嫌だ!」
娘は可愛いことは正反対に頑固なので、隊員の説得には応じなかった。その時。ガサっと森の木が揺れ、何かが現れる。
「うわあ!?」
放射能生命体レディオアクティビティクリーチャが5体現れた。どれも獰猛そうなオオカミのような鋭い目つきと牙が生えていた。それなのに2足歩行している。レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフである。
「ば、化け物だ!?」
隊員は男性といる時に見た放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ゴブリンよりも危ない化け物だと感じた。
「助けて! 氏家!」
娘はやっと現実に気づいた。表情から楽しい遠足気分は消え、目は涙目になっていた。娘は氏家の後ろに回り身を隠す。
「愛子ちゃん、お家に帰ろうね!? ね!? ね!?」
隊員はこれ見よがしに娘に奇跡の谷に帰ることを何度も尋ねる。
「帰る! 氏家! 帰るよ! 氏家!」
さすがの娘も目の前の放射能生命体レディオアクティビティクリーチャの生々しい姿を見てビビりまくり奇跡の谷に帰ることを承諾する。
「よし! そうと決まれば!」
隊員は娘を抱きかかえる。
「うわあ!?」
娘は人生で初めてのお姫様抱っこにドキドキする。
「逃げるが勝ちだ!」
隊員は娘をお姫様抱っこしたまま、来た道を逆に駆け足で放射能生命体レディオアクティビティクリーチャから逃げ始めた。
「ガルル!?」
放射能生命体レディオアクティビティクリーチャもただ黙って見ている訳ではなかった。すぐに隊員と娘を追いかけ始めた。
「そうだ!? 精霊さんたち愛子を助けて!」
娘は奇跡の谷で捕獲し、リュックサックに詰め込んできた精霊たちのことを思い出した。娘はリュックサックのファスナーを開け、中の4体の精霊たちを放射能の霧の中に飛び立出す。
「どうしたの愛子ちゃん?」
風の精霊が娘に尋ねる。
「オオカミに追われているの! 助けて! 精霊さんたち!」
娘は風の精霊に現在の状況を伝える。
「あれ!? ここはどこ!? さくらの青い地球じゃない!?」
水の精霊が周囲を見渡すと、自分がいた谷とは違う光景に気づく。
「本当だ!? なんだか気持ち悪いや!? なんだか息苦しい・・・。」
草の精霊も環境の違いに気づいた。奇跡の谷は空気が澄んでいて地球を感じることができるが、放射能の霧の中では精霊たちは生きていけなかった。
「ここは僕が食い止めるから、愛子ちゃんは早くさくらさんの元に戻って! さくらさんを悲しませると僕たちは消えてしまうから。」
火の精霊は自分が化け物を食い止めるから、女性の娘には無事に逃げてほしいと思った。精霊たちは女性のことが大好きで、もちろん女性の娘も大好きだった。
「火の精霊さん。」
娘は自分の性で精霊さんたちも危険な目に遭わせてしまったと泣きながら後悔している。
「泣かないで、愛子ちゃん。僕はさくらさんが生み出してくれたんだ。だから、これでサヨナラじゃないよ。僕はさくらさんの青い地球に帰るだけだから。愛子ちゃんがさくらさんの元に無事に帰ってくれれば、また会えるからね。」
火の精霊は悲しそうな顔をしている娘を励まそうとする。
「ありがとう。火の精霊さん。必ず無事に帰るから、また会おうね! 絶対だよ! 約束だからね!」
娘は火の精霊と約束を交わす。娘は自分が無事に帰ることが火の精霊のためになるのだと思った。
「うん。約束だよ。おまえたち! 愛子ちゃんを守ってくれ!」
火の精霊は他の精霊たちに娘のことを託した。
「おお!」
他の3体の精霊も火の精霊の志を受け止める。
「おい、早く走れ!」
急に隊員が服の中に忍ばせていた地の精霊が隊員に声をかけてくる。
「うわあ!? しゃべった!?」
隊員はいきなりなので驚いた。ここまで隊員が放射能の霧の中を歩いても放射能に汚染されていないのは、この地の精霊のおかげであった。
「いいか! 愛子ちゃんをさくらに届けるんだ! 絶対にさくらを悲しませてはいけない!」
地の精霊は隊員に娘を母親の女性の元に送り届けるように言う。まるで精霊たちはさくらが生み出したかのように、さくらのことが大好きなのが隊員にも伝わってくる。
「分かった! 愛子ちゃん! 逃げるよ!」
隊員は放射能生命体レディオアクティビティクリーチャは精霊たちに任せる。
「逃げろ! 氏家!」
娘は隊員にお姫様抱っこされながらも隊員に命令口調で話し続ける。
「おお!」
隊員は娘の母親の女性のいる奇跡の谷に向けて必死に走り始めた。
「火の精霊さん! ありがとう!」
娘は、その場に残った火の精霊に感謝の言葉を心を込めて言う。
「僕がこいつらを倒して、愛子ちゃんを守るんだ!」
火の精霊は迫りくる放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフ5匹を目の前にして、少し恐怖を感じる。
「絶対にさくらさんを悲しませないんだ!」
火の精霊は1匹の放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフに飛びついた。そして火の精霊らしく激しい火花を散らし炎の熱を上げていく。
「みんな、また会おうね!!!」
ドカーンと火の精霊は自爆した。火の精霊は大爆発を起こし周囲は火が飛び散って燃え移った。火の精霊が飛びついた放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフは跡形もなく吹き飛び爆死した。残りの4匹も全身に火傷を負ったり、腕が方一本吹き飛んで無くなっていたりした。火の精霊は自分の命と引き換えに娘を守ろうとしたのである。
「うわあ!? 今のはなんだ!?」
娘を抱きかかえながら逃げている隊員にも火の精霊が自爆した爆発音が聞こえたが、隊員には火の精霊が自爆までしたとは思いもしなかった。
「火の精霊さん・・・。」
鈍感そうな隊員とは違い娘には嫌な感じを覚えた。まるでプレッシャーのような息苦しいものだった。
「ガルル!」
放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの追撃は止まらなかった。隊員と娘を目掛けてオオカミが獲物を狙うように襲いかかってくる。
「今度は僕が足止めをしてくるから、人間のお兄さん。愛子ちゃんを守ってね。」
風の精霊が隊員に娘のことを託し、火の精霊に続き放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの相手をすると言う。
「おお! 任せとけ! 逃げ足だけは自信がある!」
隊員は化け物と戦わなくていいと思うだけだった。風の精霊に化け物は任せて、ただ只管に走り奇跡の谷を目指すのだった。
「風の精霊さん! ありがとう!」
娘は風の精霊にお礼を言いながら隊員に抱きかかえられたまま、この場を去って行く。これで娘と隊員の元には水と草、地の精霊の3体になってしまった。
「強風で粉々に吹きとばしてやる! さくらさんの青い地球のために!」
ドカーンっと風の精霊は自爆した。その衝撃は突風を作り出し竜巻のように吹き荒れ、迫りくる放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフたちを吹き飛ばした。
「ガルル!?」
強風は1体の放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの体を舞い上がらせ胴体を引きちぎった。他の3体は体を地面に伏せて、なんとか激しい風から身を守った。
「ガルル!」
放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフは仲間を殺され怒りをさらに高め、逃げる隊員と娘を追いかけ始める。
「ねえ、精霊さん。どうしてお母さんをそんなに大切に思ってくれてるの?」
隊員に抱っこされながら逃げている娘は精霊たちが自分の母親である女性を大切に思ってくれていることを感じて、精霊たちに質問した。
「それはね。僕たちはさくらの意志が生み出してくれたからだよ。さくらが水と緑に覆われた青い地球を見てみたいと願ったから僕たちは生まれたんだ。」
水の精霊は口が軽かった。水の精霊は得意げに自分たちの誕生の秘密を娘に言ってしまう。
「バカ野郎!? 簡単に愛子ちゃんに話すな!?」
草の精霊が水の精霊を怒る。草の精霊は母親である女性の娘が真実を知ってしまうのを恐れている。真実は絶対に女性の娘に知られる訳にはいかなかった。
「ごめん、ごめん。」
水の精霊は草の精霊に精霊誕生の秘話を娘に話してしまったことを謝る。
「それって、どういうこと?」
娘は精霊たちの話を聞いたけど意味が分からなかったので、言い争っている精霊たちに娘が詳しい説明を求めて興味津々に尋ねてくる。
「僕、化け物の足止めに行ってきます!?」
そう言うと水の精霊は逃げるように放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの方に向かって行った。
「あ!? 逃げるな!? 卑怯だぞ!?」
残された草の精霊は水の精霊に手を伸ばすが届くはずもなかった。
「ギク!?」
そして自分に覆い被さるような影に恐怖を感じる。影の方を振り返ると娘が、おまえだけは逃がさないぞという顔をして草の精霊を見つめていた。
「ねえ、どういうこと?」
娘は草の精霊に狙いを定めて、精霊を自分のお母さんが生み出したというのはどういうことなのか真相を聞こうとしていた。
「そ、そ、それはさくらに聞いてください!?」
草の精霊の一存では言っていいのか、悪いのかが分からないので判断できなかった。だから正直にお母さんの女性に尋ねてほしいと言った。
「いいから教えなさよ!」
娘は女性の子供であり、一筋縄ではいかぬ意志を子供ながらに持っていた。どうしても娘は疑問に思ったことは知りたいのだった。
「え!? えっと!? そ、そ、それは・・・。」
草の精霊は水の精霊の性で必要以上に娘からの追及にたじろいていた。
ドカーン!!! その時だった。どこかで水が弾ける様な音がした。水の精霊が娘たちを守るために自爆したのだった。これで放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフはあと2匹になった。
「ガルル!」
3体の精霊の自爆から難を逃れ、隊員と娘を追いかけ放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフが2匹すごいスピードで追いかけてくる。
「キャアアア!?」
娘は悲鳴をあげて慄く。
「逃げろ!?」
隊員は気持ちだけ更に早く走った。
「バイバイ! 愛子ちゃん! 楽しかったとさくらにも伝えてね!」
そう言うと草の精霊は自ら娘の手の中から離れ、放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの方に飛んで行く。
「草の精霊さん!?」
娘は手を伸ばすが隊員が走っている方向と逆なので草の精霊を掴むことはできない。そして草の精霊は1匹の放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフにくっついた。
「さくら、愛子ちゃん、またね。」
ドカーン! 軽く涙を浮かべた草の精霊は自爆した。どんなに自爆をしても1体の精霊で放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフを1体倒すのが精一杯だった。精霊の力は弱く、たくさんの精霊が生み出されることによって水と緑の溢れる青い地球を確立しているのであった。
「ということで、地の精霊さん。」
娘は隊員の服の中から地の精霊を取り出す。
「ギク!?」
地の精霊も娘が何を聞いてくるのか予想できているので言葉に困る。
「お母さんが地球を生み出したって、どういうことなの?」
娘は自分の母親である女性が、放射能に汚染されていない奇跡の谷と呼ばれる本来の青い地球を生み出していると聞いて不思議なので地の精霊に問いただす。
「そ、そ、それは・・・。」
地の精霊は困り果てて、何と答えればいいのか分からない。
「愛子ちゃん、その最後の精霊は手放しちゃダメだよ!? 精霊がいなくなったら2人とも放射能に汚染されてしまうからね!?」
隊員は娘に地の精霊は大切にしなければいけないと言った。
「ガルル!」
そこに放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフのこちらも最後の1匹が隊員と娘を目掛けて飛んで来る。
「ヒイイイイ!? 出た!? 化け物だ!?」
隊員も娘も恐怖を感じる。慌てふためいて必死で逃げるも相手の方がスピードが早いので追いつかれるのも時間の問題だった。
「もうすぐ谷よ! 逃げろ! 氏家!」
娘も隊員に奇跡の谷はもうすぐだから逃げきるように言う。
「・・・。」
しかし隊員には自分たちが谷に着くより化け物の方が自分たちに追いついて食べられる方が早いと感じた。
「愛子ちゃん、1人でもお母さんの元に帰れるかな?」
隊員は娘に聞いた。
「え?」
娘はいきなり隊員が変なことを言うので、嫌な予感がする。
「俺の命は愛子ちゃんのお父さんに助けてもらったもので、本当はもう死んでいたんだ。それに精霊たちは生命をかけてでも君を守ろうとしている。」
隊員は覚悟を決めていた。今までの精霊たちの捨て身の行動を目のあたりにしてきて、精霊たちのためにも娘だけは守らないといけないという使命感が芽生えていた。
「氏家!? 何を言ってるの!? 氏家!? 2人で谷に戻るのよ!?」
娘は隊員が自分の側からいなくなりそうな気がした。
「地の精霊! 愛子ちゃんを谷に連れていけ! ここは俺が食い止める!」
隊員は地の精霊に命令した。隊員には青い地球の真実や精霊の誕生の理由や意味は分かっていないが、生命をかけてでも娘を助けようとした精霊たちのためにも絶対に娘だけは守らないといけないと思っていた。
「わかった! 愛子ちゃんはさくらに送り届けるよ!」
地の精霊は隊員の腕に抱かれている娘を引き離そうとする。
「嫌だ! 氏家も一緒に谷に帰るんだ! 愛子1人じゃ嫌だ!」
娘は隊員の体にしがみつき地の精霊の力をもってしても、娘を隊員から引き離すことができなかった。
「愛子ちゃん!? 俺のことはいいから早く逃げて!?」
隊員は体から娘を引き離そうとする。
「嫌だ!? 氏家を置いていけない!? こうなったのも愛子がお外に大冒険に行ったのが悪いんだもん!? 愛子が悪いんだもん!?」
娘は自分の勝手な行動を反省していました。精霊たちとの別れや悲しみを経験することで命の大切さや自分の好奇心で奇跡の谷の外の危険な世界にやって来て、隊員や精霊たちを危険な目に遭わせていると後悔しているのでした。
「ガルル!」
言い争っている隊員と娘の前に放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの最後の1匹が現れました。仲間を殺されたからか、最後の1匹はとても怒っていました。
「キャア!?」
娘はもう助からないと思いました。放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフが手を伸ばせば届く距離まですごいスピードで接近してきたからです。
「愛子ちゃんは俺が守る!?」
隊員は恐る恐るも咄嗟に娘と放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの間に体を入れ、なんとしてでも娘を助けようとします。
「ガルル!」
放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフが鋭い爪の腕を伸ばします。隊員の体を爪で貫通しそうな勢いです。
「ギャア!?」
娘は恐怖で目を瞑る。
「うわあ!?」
隊員は放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの鋭い爪で体を貫かれ死ぬものだと感じました。
「・・・。」
しかし、隊員が放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフの爪に刺されて死んだという感じはなく、急に静かになりました。
「あれ?」
娘は恐る恐る閉じていた目を広げます。
「ガルル!?」
隊員は無事でした。放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフが隊員を殺そうと伸ばした腕を謎の男が現れ手で掴み、隊員に鋭い爪が刺さるかもという間一髪のところで止まっていました。
「消えろ、雑魚。」
そこに現れた男は何をしたのか分からないくらい一瞬で放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフを消し去りました。まるで大きなエネルギーをぶつけて高温で焼き尽くしたかのように。これで5匹いた放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフは全滅した。
「おまえたちはなんだ?」
隊員と娘は現れた謎の男に放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフから助けられた。そして男は放射能の霧の中に、なぜ人間の男と小さな女の子がいるのかが不思議だった。
「自分は日本国警備隊の隊員だった氏家隊員であります。こちらは知り合いの女の子です。」
隊員は放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフから助けてもらったこともあり、目の前の男はきっと安全なのだろう、いい人なのだろうと隊員らしく純粋に思い込んでしまった。
「愛子です。助けてくれてありがとう。」
娘も放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフから助けてもらったので目の前の男を優しくて強いお父さんの男性と同じような人だろうと思い込んでしまった。
「なぜ人間が放射能の霧の中で生きていける?」
現れた男は、なぜ人間の男と幼い女の子が放射能の霧の中にいるのか不思議だった。普通であれば放射能の霧の中に生命などある訳がなかった。それに現れた男には隊員と娘は放射能の霧の中で汚染されていなように見えたからだ。
「これは精霊さんなの。」
娘は手に地の精霊を持ち、現れた男に見せながら言う。
「精霊?」
現れた男には直ぐには理解できなかった。この放射能の霧に覆われた世界で、精霊などというものは伝説上の生き物で、まだ地球がきれいな青い惑星と言われていたころに存在したとされる、現在では誰も見たことがない者だからだった。
「精霊さんを持ってると放射能に汚染されないの。」
娘は笑顔で現れた男に放射能の霧の中でも、放射能に汚染されない理由を言った。
「それなら、その精霊がなくなればどうなる?」
現れた男が隊員と娘に意外な質問をする。
「え!?」
この時、隊員と娘は初めて目の前の男は危険かもしれない、危険だと気づいた。放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフから助けてくれたので良い人だと思っていたので悪い人だとは思わなかった。
「さあ、その小さな精霊というものを渡してもらおうか。」
男は手を伸ばし娘から地の精霊を取り上げようとする。
「ダメ!?」
娘は地の精霊を抱きしめる大声で叫ぶ。この地の精霊が目の前の男に取り上げられたら自分と隊員は放射能に汚染されてしまう。
「助けて! お父さん!」
瞳から涙を流し顔をくちゃくちゃにしながら困り果てた娘は、自分が1番頼りにしている父親の名を叫ぶ。
「愛子!!!」
その時、娘のことを呼ぶ父親である男性の声が聞こえる。
「!? お父さん!」
娘は自分の名前を呼ぶ声が聞こえた方を振り帰る。すると父親である男性が現れる。そしてそのまま、娘と目の前の男の間に着地する。目の前の男は距離を取るため後ろに飛び間をあける。
「愛子、大丈夫か!?」
父親の男性は娘を抱きかかえると、よっぽど心配だったのだろう娘の無事を確認して安堵する。
「うん! お父さん! 愛子は大丈夫だよ! 氏家と精霊さんたちが守ってくれたの!」
娘も父親に自分は大丈夫だと言う。今の自分が無事でいられるのも精霊たちが守ってくれ、隊員が愛子を連れて逃げてくれたからである。娘も今回の出来事で大きく成長していた。
「そうか。わかった。」
父親の男性は娘の頭を手でポンポンと撫でてあげる。娘は父親に甘えたいのか、やっと顔に笑顔が戻る。
「氏家、ありがとう。」
父親の男性は隊員に娘を命懸けで守ってくれたことを感謝する。
「これでも愛子ちゃんよりは大人だからな。」
隊員は強がりを見せて、やってやったという表情をする。
「氏家、愛子を連れて、今すぐにここから逃げろ。」
父親の男性は真剣な眼差しで隊員に娘を連れて逃げろと言う。放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフを一瞬で倒してしまう目の前にいる男が危険なのである。
「わ、分かった。愛子ちゃんは俺に任せとけ!」
隊員は父親の男性に娘のことは任せておけと言った。
「うわあ!?」
隊員は娘の体を担ぎ上げ肩に背負う。
「じゃあな! 後は任せた!」
そう言うと隊員は父親の男性と危険な男のいる、この場から一目散に走って逃げだした。父親の男性は去って行く娘の姿を見てクスッと笑う。
「待たせたな、一条。」
そして危険な男の方に振り返り真顔で相手の名前を呼んだ。
「聞いてないぞ? いつから父親になったんだ? 飛鳥。」
娘と隊員の危機を放射能生命体レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ウルフから救い、隊員と娘から地の精霊を取り上げようとしていたのは日本国の陛下と呼ばれる男だった。なぜ放射能の霧の中に陛下という人間がるのか分からなかった。
「聞かれなかったのでな。」
男性は陛下に素っ気なく答え敵対するような感じである。。
「知らないのに聞ける訳がないだろう。まさか放射能の霧の世界で人間が生き残り、子供を作って子孫繁栄していたなど。放射能汚染防止シールドの中の人間が聞いたら口から泡を吹いて倒れてしまうわ。」
男性と陛下は過去からの知り合いのようだったが、男性と陛下の2人は友達の様で友達ではない様な微妙な関係に思えた。
つづく。
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