第23話 浮月
日が沈み、雲の間に三日月が空に浮かんだ。セヴェーロは捕らえた反国王派の尋問と、ヴィルフリートが得てきた情報を洗っていた。
朝になれば王は、ヴィルフリートと少数の護衛をつれて、バーデ公国の大公との会談へ向かう。セヴェーロは自分も随伴するべきかもしれないとも思ったが、リーンハルトの事も気になっていた。
不安がある。調べるほどに、バーデと反国王派の活動が呼応している事実が浮かび上がる。
もし会談が決裂に終われば、バーデが国に攻め入り、と同時に反国王派が国内で破壊活動を始める可能性が考えられた。
バーデと反国王派、双方の動きに対応するためにセヴェーロは城内に残る事を決めた。最低でも、どちらかは騎士隊が止めなければならない。
(いや……本当なら反国王派を討伐しに行くべき、か……)
だが状況を鑑みるに、罠とも思えた。思えていながらリーンハルトを行かせた自分を蛇蝎の如く感じもするが、選択としては正しい事も解っている。
ルーペルトの討伐に手間取り、その間にバーデに向かった王が危機的状況に陥ったとすれば――。
(結局俺は、父さんに縛られているな……)
王の出発の時間ぎりぎりまでリーンハルトを待つ。戻ってこなければ――殉死の可能性も含めそうなれば、王に随伴する。
(リーンハルトは、“決着”を望むだろう……今からでも止めたほうがいいのだろうが)
しかし、止めたところで聞くとも思えない。リーンハルトは反国王派、特に裏切り者ルーペルトへ尋常ならぬ執着を見せている。
理由は、セヴェーロは認めたくはないが、“そう”なのだろう。
(リーンハルト……君は本当に、ハインリヒを……)
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