第3話

嫌いな人から好かれるなんてボクはとんだ不幸者だ。そして、それは彼女も同じだ。好きな人に嫌われているなんて。

「…セカイちょっと来いって。」

シバはそういって、まるでゆでダコみたいになったセカイさんを教室から連れ出した。きっとボクが居ちゃいけない話をするんだろう。恋の話とか、部活あるから早く戻って来いよ。とだけ言った。もちろんシバに向けて。



「カイは羨ましいなー。」

「なんだよシバ。あ、そこセミの死骸踏む…」


クシャ


乾いた音と同時にシバのうるさい叫び声。


「だぁー!!ちょ、もー。カイもっと早く言えよ!!踏んじまったじゃねぇかー!」

「足元見て歩いてないシバが悪い。」


セミって、普段木に止まってるときはイキイキ鳴いているのに網で捕まえた時のあのキーンとした「この世の終わりです」みたいな、断末魔って言うんだっけ?あの鳴き声が苦手で捕まえられた試しがない。


「セミって1週間くらいしか生きられないの可哀想だよなー。」

「シバ…」


シバは優しい。偶に空気の読めない行動することがあるけど、ボクが彼女といる時とか。でもそれは、いつまで経ってもボクに告白できていない彼女がボクに告白しやすい雰囲気作りだろう。シバなりの。全部失敗に終わってるけど。


「シバ…セミは土の中でも生きてるから外にいる時間は人生の一部だよ。」


ボクがいつも通りに事実を述べて、シバがまたうるさい叫び声を上げた後、いつも通りに2人で帰る。


人生の一部なんだ。外にいるのは。ボクが彼女と過ごすのも、シバといるのも。きっと、嫌だけどボクが走ることが出来るのも。

ボクの短い人生の一部なんだ。







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