親の顔が見てみたい

 王都の酒場、魔王との戦いに勝利を収めて帰還した女勇者一行がテーブル席に腰を下ろし、祝杯を交わしていた。格闘家、魔術師、ガンナーは手に持つグラスを互いに小突き合い、一斉に芳醇なぶどう酒を飲み干す。互いの健闘を称え、労い、運ばれてくる料理をつまみながら、グイグイと際限なく酒を進めていった。

 先に酔いつぶれたガンナーと魔術師は、店主の粋な計らいで宿屋に運んでもらい、まだまだ飲み足りない女勇者と格闘家はカウンター席に移動して、晩酌を続けた。ビール瓶を咥えて半分程飲み干し、女勇者は重い瞼を垂らしながらぶつぶつと愚痴を零し始めた。

「この物語の~作者ぁ~?ぜったぁぁぁいスケベなおっさんだと思いまぁ~す。」

突然変なことを言い出した女勇者に、格闘家はクスクスと小さく笑いながら話に耳を貸す。

「その心は?」

「あんね~、らっれね~、女の子大過ぎれしょ~?あらしも女ぁ~あならも女ぁ~ぱーりーみんあ女ぁ~。」

「ふふ、偶然じゃないの?」

「ぐうれんじゃないのぉ~!魔王らっれ、国王しゃまらっれ…だぁいじんまれみぃんな女なんらよぉ~?」

「ここの主もね。」

勇者は残りの半分を飲み干して瓶を強くテーブルに置くと、隣に座る格闘家の背中に腕を回して肩を組み、新しい瓶を開けて、彼女のジョッキにビールを注ぎ足した。

「ほぉ~らぁ~、みんあみ~んあ、女の子れすお~。びしょーじょちゃん勢揃いれ、アイロルけっせーしちゃうよこれぇ!」

「ふふ、アイドルね。」

口を尖らせながら、余った手で勇者は格闘家の衣装を何度も生地を伸ばすように引っ張り始めた。

「そ~よ~、アイロルよぉ~。こんにゃ露出高ぁい服着た子ばっかぁ~り。男の子なんて鎧かステテコのろちらからし~。」

「ステテ…っふふ!まぁ、確かに女性の衣装の肌面積の割合はおかしいよね。下なんてほとんどパンツ見えちゃってるし。」

「れしょ~?ぜぇったい、作者の奴ぅ、涎垂らしてぇ~、鼻息荒げれぇ~、うああああああきもちゅ…おろろろろろろ~~~~~…。」

女勇者は床に跪き、吐くような素振りを見せる。嘘と分かっていながらも、格闘家は小芝居に付き合い、彼女の背中を擦った。

「ほら、おばあちゃん、しっかりして。100歳まで長生きするんでしょ?」

「わらしはピチピチの若いおね~さんらっ!らのにぃ~この穢れを知らない淑女にぃ植物モンスターの蔓をかりゃめたり~、衣服だけ溶かしゅぅ~変態スライムとぉ~戦わしぇたりぃ~!!」

「あはは、あの時は全員丸裸にされて大変だったね。」

「んも~~~~~~~~!!笑いごろらにゃいにゃむにゅん…。」

背中を擦る手を払い除けて、床の上で仰向けになって駄々っ子のように手足をバタつかせていた女勇者は、やがて酔いが回ったのか、ぐっすりと眠りについてしまった。格闘家は、彼女の頭を優しく撫でて、しゃがんで彼女を背負い、酒場の主にお礼を言ってから、宿屋へと向かった。道中、月明かりの空を見上げながら、宿屋でエッチなハプニングを起こすなよと、居るかも定かではない世界の作者に対して忠告して、背中の温もりを感じながら一人静かに笑った。


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