勇者の軌跡
輝きを取り戻した世界、魔物の脅威から解放された人々は、平和で安穏な日々を送るのだった。
そのきっかけとなった光と闇の最終決戦。勇者は混沌の魔術を操る闇の帝王を前に、怯むことなく立ち向かう。七色に煌く神の剣を引き抜き、漆黒の雷を縦横無尽に動いてかわし、帝王の真上から輝きの一撃を振り下ろした。負けじと骸骨杖で剣撃を防ぐ帝王だったが、世界中の人間達の思いを宿した光の聖剣の力に抗い切れず、武器共々その身を二つに引き裂かれて消滅した。暗雲を吐き出していた闇の社を起点とし、世界を覆う黒い影は完全に消えてなくなった。
運命の一戦の勝利の要となったのは、勇者が社に到着する前。草原の村から始まり、山林の洞窟、王都、海辺の町、海底洞窟、焦熱砂漠、オアシスの村、極寒の町、冷雹の湖、漆黒に飲まれた街…長き一人旅のあちこちで魔物を討伐し、攫われた子供を助け、占領された町を解放し…怯える人々の笑顔と希望を取り戻しながら悪しき帝王の待つ社を目指した。背に携える神に与えられし剣に、人々の思いを宿し続けて。
世界を救いながら光の聖剣と共に旅路を進む勇者。彼は辺境の田舎にある小さな村で誕生した。父は屈強な村の戦士で普通の人間だったが、母は彼の一族が代々守ってきた村の守り神である女神だった。ある時、闇の帝王の出現を父親である世界の最高神より伝え聞かされた女神は、幼い勇者を残して夫と共に神の討伐隊に参加。結果として、神の軍勢は大敗し、両親は帰らぬ人となった。悪に敗れ、瀕死の最高神は最後の力を振り絞り、孫である勇者に神の剣を残してこの世を去った。それから勇者が成人を迎えた年、育ての親である父方の祖父は、勇者に神からの遺言と神剣を授け、世界救済の旅に出るように話す。勇者は力強く頷き、父譲りの屈強な肉体と母譲りの聖なる力をその身に抱き、闇の帝王の配下である魔物が蔓延る暗黒に支配された世界に飛び出して行くのであった。心に滾る正義の炎と世界を照らす希望の光を握り締めて。
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