終わりが始まり
■勇者と魔王編
旅の途中で格闘家、僧侶、魔剣士を仲間にした勇者は、魔王の城へと到着した。激闘の末魔王を倒し、世界は救われた。
■魔物になってしまった王国騎士団団長編
噂を聞いてやってきたフツーノ村で聖水を手に入れた団長。瓶を開けて、雫を一滴口に零すと、緑色の爛れた皮膚は色を変え、肉骨の構造が音と共に変化し、懐かしい感覚が戻ってきた。村の泉の水鏡を覗くと、そこには長年会いたいと願っていた人間の自分の姿が映っていた。団長は大喜びで、城へと帰っていった。
■少女の霊に呪われてしまった女子高生編
「後一つ!」
最後の蝋燭に火を灯せば、あの子の無念も浄化される。私は最後の力を振り絞り、息苦しさを堪えて、背後から迫る少女の霊と距離を取りながら、鎮めの蝋に全て、光を灯した。少女に背中を掴まれた瞬間、鋭い刃物のような殺意は消え去り、少女の瞳に光が戻った。掴んでいた少女の手は私をすり抜けるようになり、彼女を包んでいた黒いオーラの雲はすっかり晴れてしまった。
「ありがとう。」
年相応の可愛い笑顔を残し、彼女は天に昇っていった。
こうして、私の恐怖の夜はようやく終わり、無事に朝焼けを迎えることができたのであった。
■無名事務所から一流アイドルになった少年編
客席から沸き起こる歓声。登場はこれからだというのに、会場は既に熱気に包まれていた。喉を鳴らして唾を飲み込む。緊張感に気付いたのか、次郎と太郎が肩に手を置いてくれた。大丈夫、俺たちなら成功させられる。これまで数多の苦難を乗り越えてきた俺たちなら!振り返り、花子さんの顔を見ると、彼女は笑顔でサムズアップしてくれた。
「行くか!」
「おう!!」
「うん!!」
俺たち三人の初の全国ツアーが今、幕を開けた。
■愛する夫を友人に奪われた妻編
「きーみはー、ぼーくのー、めーがーみーさーまー…」
学生時代、あなたが私のために作ってくれた愛の歌、今でも覚えているよ。あなたが忘れてしまった温かい感情も全て、私は今も、これからもずっと…。
私の復讐は終わった。裏切り者は、穢れの中がお似合い。一生どぶ水が飲めるようにしてやった。私を傷付けたあなた、最後に謝ってくれたので許してあげる。これからはずっと一緒だよ。ずっとずっと…。私は庭先に植えた白い苗木を愛おしく見つめながら、取り残しがないように自分の唇を再び舐めた。
■獣の王者を目指すゴリラ編
ライオーンの巨体がふらつく。両手で顔を覆っていたチンパンは、ゆっくりと顔を解放して戦いの決着を伺う。目の前の光景に安堵と歓喜の一息を吐いた。ゴリロウが勝ったのだ。渾身の百獣クローを紙一重で交わし、必殺のゴリボンゴをライオーンの鋼の肉体に食い込ませた。胸板に掠った爪痕を残しながらも、力いっぱい握った左拳を右肋骨下部に打ち付けたのだ。ライオーンは白目を向いたまま後方に倒れ込んだ。絶対王者の陥落に、チンパンを初めとする戦いの様子を見にきた世界中の動物たちが歓喜の鳴き声を上げて、ゴリロウを祝福した。試合終了のゴングが鳴り、ゴリロウは満身創痍ながらも、力強いドラミングで勝利を知らしめ、観客たちの祝福に応えた。
こうして、弱肉強食の時代は終わりを迎え、心優しい王者が統治する穏やかで平和な世界が訪れたのだった。
■お魚さんの喧嘩を止める女の子編
その時、花子ちゃんが二匹の間に割って入りました。
「もう喧嘩はやめて!二人ともいつもの仲良しさんに戻ってよ!」
花子ちゃんはその場でえーんえーんと泣き出してしまいました。花子ちゃんを悲しませるつもりが無かった二匹は、真っ赤な顔から元の青色に戻り、花子ちゃんに頭を下げました。花子ちゃんは、二匹の様子を見て、自分も泣くのをやめて、二匹と手を取り合ってこんなことを言いました。
「お魚さん、大事なのは味付けだけじゃないよ。一番大事なのは、お魚さん自身の美味しさ、だよ!二人は同じお魚さんだもの。どっちも美味しいお魚さんだもの!!」
二匹の魚は、互いに顔を見合わせて、それから不思議と笑いが込み上げてきました。なんだ、そっか。どんな味付けをしても、どうやって食べても、僕たちの種類が美味しいことに変わりなかったのか、と。
それから、仲直りした二人は、塩と醤油で味付けされて、花子ちゃんに美味しく食べてもらいましたとさ。
■幼馴染に告白する少年編
いつもと変わらない通学路。いつもと変わらず、並んで歩く幼馴染。いつもと違うのは、手に伝わる淡い肌の感触と優しい温かさ。
「照れてる?」
「…お前こそ。」
顔を見なくても相手の感情が手に取るようにわかる。花子は太陽よりも真っ赤になりながら眩しい陽射しを放っている。
季節は夏。だれるような暑さも吹き飛ぶほど、俺たちは終わりのない青い春に心躍らせていた。
■宇宙ヒーロー編
遥か空の彼方で、弾ける花火のように一瞬の眩い閃光が煌く。花子は茫然と脚を折って地に座り込む。
「太郎…ちゃん…。」
銀河帝王の最後のあがきを太郎が阻止したのだ。自身の命を賭して。母なる大地を、そして愛するもの達を、最後まで救い抜いたのだ。
「あああ…!!太郎ちゃん!!太郎…ちゃん!!」
乙女の涙の雫は、無常にも地を湿らせるだけで何の奇跡も起こしてくれなかった。
陰より銀河帝国から地球の平和を守り抜いた星の英雄は、一人の少女を除き、誰にも気付かれることなく、巨悪と共にこの世を去っていった。
■近所のトラブルメーカー編
太郎が居るから皆が困る。でも、太郎が居るから皆が笑える。お気楽トラブル野郎の自分勝手でたまに人のためになる、能天気な俺様ライフはいつまでも続く。そこに太郎が居る限り、続くったらぁ続くぅ~。
FIN
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます