7章 第3話 二学年三大美女②

「でね、どう思う山ちゃん?」

「それは分からないけど...。というか山ちゃんってなんだよ」

 山神が困惑した様子でそう返すと、晴野は真顔に戻る。

「え。山神だから山ちゃんでしょ...?」

「そういうことを聞いてる訳じゃないんだけど」


 新学期が始まって2週間。山神たちも新しいクラスに慣れてきていた。その中でも初日に話題に挙がっていた晴野とは少しずつ話をするようになっていた。しかし、持ち前のコミュニケーション能力なのか、その距離の詰め方は山神も戸惑うほどだった。

「麗音ー。かえろー」

「はーい。じゃね、山ちゃんと明ちゃん」

 晴野は別のクラスの友人に声を掛けられると、山神と明に挨拶をして教室を飛び出していった。

「なんか嵐みたいな子だね...。話してるのは楽しいけど」

 明が呟くと、山神は苦笑いで頷く。

「そうだな。まあ、あの様子なら友だちが多いのも納得だけど...」

 続く言葉が出てこないことに明が首を傾げる。

「だけど...?」

「いや、ちょっと気になることがあったけど、気のせいかもしれない。まだ会ったばっかりだしな」

「な...1人で納得しないでよ。気になるなぁ」

 自己解決した様子に、明は不満そうにそうこぼした。



「お...結構時間経ってたな。そろそろ帰るか」

 明や他のクラスメイトとの世間話が盛り上がっている中、ふと時計を見た山神が呟いた。新学期が始まったばかりで、教室にはまだ他の生徒も残っているが、普段ならば部活をしていない生徒はとっくに帰っている時刻だ。山神が話していたメンバーに挨拶して教室を出ると、明も後に続いて彼に並ぶ。

「山神...今日養成校は?」

「今日は休みだよ。ちょっと寄り道でもして帰ろうと思ってた」

 山神の返事を聞き、明は少し俯きながらも期待した表情で続ける。

「じゃ、じゃあ。途中まで一緒に...」

 しかし、明が頬を染めながらなんとか言葉を出した時、それを遮るように2人は後ろから誰かに呼び止められた。

「あの、帰るところごめんなさい!」

 2人が反射的に振り返ると、そこには1人の女子生徒が立っていた。身長は低めで、少しソワソワした様子だが、見た目は普通の女子高生といった感じだ。


「君は確か同じクラスの......?」

花麦はなむぎ 芽生めいです。山神君、東乃さん(※明の名字)」

 2人を呼び止めたのは、クラスメイトの女子生徒、花麦だった。名前を聞いて、山神は思い出したと同時に、気まずそうに頭をかいた。

「ごめん。まだ顔と名前が一致しなくて」

「それでどうしたの花麦ちゃん?」

 明が尋ねると、花麦は周りを気にしている様子できょろきょろと見回した後に、決心したように口を開いた。

「実は、2人にちょっと聞いてほしいことがあって...」


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