7章 第2話 二学年三大美女

「私たちの学年、今日から2年生だけど、特に人気のある女子生徒が3人いんのよ。まず1人目があの子、晴野ちゃん」

 山神はまだピンと来てこない様子で、明の話に耳を傾ける。その手の話に疎い山神にとって、そもそも誰が人気の女子生徒なのかという話題も初耳だった。

「人呼んで二学年三美少女」

「に、二学年三美少女...?」

 ネーミングセンスを疑う通称に山神は引っかかるが、そこには触れないでとばかりに明は説明を続けた。

 晴野麗音。少し派手目な見た目に、明るくて何かと目立つ女子生徒だ。もし第三高校にスクールカーストがあるとすれば、間違いなく上位に入るだろう。コミュニケーション能力も高く、友好関係も広いらしい。

「つまり典型的な陽キャって感じかな。でも誰にでも気さくに話しかけるから、大人しめの男子にも人気あるんだよ」

「なるほどな」

 山神は自分の席に着いた晴野の方を見る。早くも彼女の周りには輪ができていた。


「それで2人目は雨宮あめみや りんさん。こっちは晴野ちゃんとは反対で、黒髪ロングでメガネの大人しい女子生徒。友達と話していてもほとんど表情変えなくて、クールでミステリアスな美人って感じ。晴野ちゃんみたいに前に出てくるタイプじゃないから、そんなには情報ないんだよね」

「なるほど...」

 いつの間にか三美少女全員の説明に入ったようだ。実際に話を聞いてみると、確かにひと目見てみたくなる。


「じゃあ、あと1人は?」

 気になった山神は、今度は明が話し出す前に質問する。すると、彼女はため息をついた後、山神に詰め寄った。その圧に押されて、山神は少し身を引く。

「円香!月見円香でしょ!」

「え。あいつそんなに人気あるのか?」

「当たり前でしょ!あんたが思ってるよりもずっと人気があるんだからね」

 もちろん山神も円香がモテるということは知っていた。しかし、彼女は山神の前でそんな話はしないし、彼もその手の話に食いつくタイプではないため、そこまでとは思っていなかった。

「...覚えておこう」

 山神は苦い顔をする。前のクラスメイトたちも、しきりに円香のことを話題に出していた。それは決してオーバーではなかったのだ。


「まあこの話はいいや。とりあえず、晴野ちゃんとその周りは少し賑やかかもね。静か過ぎるよりはいいんじゃない?」

「それもそうだな」

 新しい担任が教室へとやってくるまで、晴野を囲んだ輪の盛り上がりは変わることなく続いていた。

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