6章 第10話 看破
(さて...厄介なのはそちらの少年だけですかね。こちらは魔術の精度も全然ですし)
荊棘は響を見ながら攻撃を続ける。閃の攻撃を避けていながらも、段々とその魔術が自分へと迫っているのを感じていた。
荊棘は閃を集中的に狙う。激しさを増す蔓を閃は火の鳥と盾魔術で防ぐ。蔓の攻撃の隙を見て、閃は一気に距離を詰めて蹴りを放つ。しかし荊棘はそれを受け止めると、彼の周りからぶわっと濃い煙が吹き出す。
(しまった!)
蹴りに体重を乗せていた閃は、すぐに回避に移ることができない。閃が煙を吸い込みそうになった瞬間、盾魔術が荊棘と閃の間を割る。煙は盾魔術で防がれ、体勢を建て直した閃はすぐにその場から離れる。
「助かりました」
閃は息を吐いて響に礼を言う。危険を察知した彼は、2人を分断するように盾魔術を使用したのだった。
「頼むぞ。俺は戦力にならないんだから...さぁ!」
響が電気の球を飛ばすと、それは荊棘の頭の上を越えていく。
荊棘はそれを一瞥して呆れたように顔をしかめた。
(やはりこちらの少年は相手ではないですね。サポートくらいはできるようですが...?)
しかし、そこで荊棘はある違和感に気づく。頭の上を越えていったはずの電気の球は、彼の真上で留まっていた。周りを確認すると、蔓で防いだはずの他の電気の球も彼を囲むようにその場に残っていた。荊棘がその場から離れようとした時、電気の球を頂点に、三角錐が荊棘を囲んだ。
魔特の探索部隊を目指す響は、確かに魔術による戦闘が得意ではない。しかし、探索部隊だからといって、犯人に対峙した時に隠れる訳にはいかない。そのため、魔特の探索部隊は相手の魔術を分析して特徴を掴み、無効化する魔術を会得している場合も多い。
(これだけ大きな魔法陣で絶えず煙出してるんだ。一瞬でも魔力供給切れれば維持できないだろ)
響の考えどおり、三角錐によって荊棘から魔法陣への魔力の流れが止まる。完全に魔力を遮断する三角錐も維持するのは容易でない。数秒で形が崩れるが、同様に魔法陣もふっと消えた。発生していた煙も消える。
「響さん!やりました!」
(次はあの蔓の分析だ...!)
響がさらに電気の球を飛ばそうとした時、指を鳴らした音とともに彼の目の前に薔薇の花が現れた。そこから伸びた蔓が、響の体を直撃する。
「うぐっ」
呻き声とともに地面を転がる。さらに畳み掛けるように蔓が伸びる。閃は火の鳥でそれを防ぐが、響は周りを薔薇の花に囲まれてしまった。荊棘が指を鳴らすと、花から煙が発生し、立ち上がろうとした響は力が抜けたようにその場に倒れ込んだ。
「ひ、響さん!」
閃が駆け寄ろうとするが、蔓によって阻まれた。荊棘は悲しそうにため息をつく。
「やられました。油断したつもりは...いや、ありましたね。あぁ、彼も素晴らしい実力でした」
「さて、順序は逆になりましたが、次は貴方の番ですね」
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