6章 第3話 2月のイベント③

「...はあ?」

 響は拍子抜けした様子で、間の抜けた声を出した。一方の閃は、何やら楽しげに目を輝かせている。

「幼なじみの2人。お互いに抱く想いは普通以上のはずなのに、きっかけがないと近寄りも遠ざかりもできないんですよ。分かりますか!?」

 何やら早口でまくし立てられて、響は後ずさりする。普段はそれほど話すわけではない2人。それだけに、響は閃が嬉嬉として話しているのが意外だった。むしろ意外を通り越してかなり引いている。

「さらに一緒にいる時間が増えれば、何かときっかけが生まれます。しかも近々あるのはバレンタインデー。これはきっかけとしては5本の指に入るイベントに違いありません」


「いや、待て待て待て。そういう感じじゃなかっただろ。明らかに黒幕的な顔してたじゃん」

 放っておくと永遠に話し続けそうな閃を遮って、響は訴えかける。しかし、何を言っているんだとばかりに閃は首を捻る。

「あの笑顔から一瞬で真顔に戻ったのはなんだったんだよ」

「いやぁ、気を抜くとにやけてしまいそうで」

 響はがっくりと肩を落とす。

「...はあ。神経質になってんのは俺も一緒かなぁ。まあ、少しでも関わっちゃった以上、なんもないことを祈ってるよ」

「...御堂、お前ちょっと趣味悪ぃぞ」

 響と一緒の帰り際、火野が口にすると閃は苦笑いした。



(...響さんが言っていたことは正しいでしょうね。下手に不安を煽るのは逆効果、かえって余計な危険を招きかねません。かと言って魔特はそれだけに注力することはできません。一緒にいることでリスクを減らせるなら、それに越したことはないありません)

 2人の友人として、何も起きて欲しくないと思う閃の気持ちは本物だ。


(それと...2人の関係が発展したら、とても面白そうです♪)

 そして、山神と円香がくっついたり、いい感じになったら、それはとても面白いんじゃないかなという気持ちも本物だった。

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