5章 第26話 平穏と不安
翌日、何事もなかったかのように元気になった円香は退院することができた。休日で高校が休みだったため、山神や明たちも心配して病院へと来ていた。
「円香、本当に大丈夫?念の為もう少し入院した方がいいんじゃ...」
絵理が心配そうに円香の顔を見るが、円香は首を横に振る。
「ううん。本当になんともないから大丈夫だよ。むしろ、元気な私が入院してる方が悪いよ」
「そんなこともないと思うけど...。ま、元気ならいいじゃん!」
明がいつもの調子で明るく言うと、円香は微笑んだ。絵理は変わらず心配そうだったが、2人の様子を見て呆れたように笑った。
「そういえば明後日クリスマスだね。パーティーどうしようか?」
ふと思い出したように明は口にしたが、これに絵理は難しい顔をする。
「さすがにそれは...。円香病み上がり?だし、年明けてからにしようよ」
円香は何か言おうとするが、悩んだ様子で口を閉じる。自分のせいでパーティーをやらなくなってしまうのは嫌だが、昨日の今日で絵理がそんな気分にならないのも分かっていたからだ。
すると、横で黙って様子を見ていた山神が話に割り込む。
「そういえば、閃が『こんな時ですけど、一緒にパーティーできたらいいですね』って言ってたな」
その瞬間、絵理の目が光ると円香と明の手を握って微笑んだ。微笑んでいるが、その目からは圧が感じられる。
「でもこんな時だからこそ、明るい気持ちになれることするのがいいと思うの。...ね?」
あまりにも綺麗な手のひら返しに、2人は苦笑いするしかなかったが、円香はどこか嬉しそうに頷いた。
また盛り上がり始める3人を優しく眺めながらも、山神は光来たちが言っていたことを思い出していた。
『月見円香は普通じゃない』
『誰かが目的を持って彼女に近づいた』
信じたくもないが、その可能性が高いことは山神も十分に感じ取っていた。正直海安に対する印象は良くなかったが、嘘を並べるような人物には思えなかった。
(今以上に実力をつけなくちゃいけない。魔特になるためにも...)
山神は円香を横目で見る。
(こいつを...守るためにも)
〜6章に続く〜
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