5章 第23話 死霊魔術師(ネクロマンサー)
病室を出た山神は、すぐ近くの談話室で座っている光来を見つけた。向こうもこちらに気づいて手招きをする。
「入ろうと思ったんだが賑やかだったからね。なんともなさそうで何よりだ」
「すいません」
山神が頭を下げると、光来は皮肉ではないよと笑う。しかし、緊張した面持ちの山神を見ると、笑みはすぐに消えた。
「彼女がどうなるかだね。死霊魔術の使用は違法行為、彼女が使用したのは間違いない。まあ...詳しくは彼に話してもらおう」
光来は通路を指差す。山神が振り返ると、若い男性が立っていた。年齢は光来と同じくらい、こちらも女性人気がありそうな容姿だが、どことなく暗く鋭い印象を受ける。
「魔特第7番隊副隊長の
副隊長はその隊のトップ2、つまり光来に続く存在だ。光来と同じくらいの年齢だとすれば、彼も相当優秀だと言える。
「海安は私の同期であり、右腕だ。そして、彼は国に正当に認められた死霊魔術の使い手。つまり
「こ、この人が...!」
山神は開いた口が塞がらない。そもそも死霊魔術自体生きてるうちに目の当たりにする人間の方が少ないため無理もない。
一方の海安は表情を変えずに話し始める。
「死霊魔術は死者の魂の力を利用した戦闘魔術。死者と対話できるなんてことはない。まあ、死者の声が聞こえてくるというのは間違いではないがな」
「それはどういう...?」
首を傾げる山神に光来が補足で付け加える。
「死者の魂の力っていうのは、負の力の方がとても大きいんだ。呪いとか、祟られるというのと少し近いかもしれないね。負の力は、恐怖や怒り、妬み嫉み。魔術を初めて使った時、その影響をまともに受けることになる」
今度は海安が続ける。表情は先ほどよりも険しくなり、山神も息を飲む。
「耳を塞ごうが、脳に直接響く断末魔の叫び。そんなもんを魔術が身体に馴染むまで何時間も聞いてたら普通は気が狂う。死霊魔術を使うってのはそういう事だ。だから使用を禁止されてる。俺が大丈夫なのは、代々死霊魔術を使う家系として、特別な訓練を受けてきたからだ」
ここで海安はひと呼吸置く。山神はその間に、何か嫌な予感を感じた。
「説明はもういいだろう。結論から言う。月見円香は普通ではない」
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