5章 第14話 捜索①

 その頃、山神と明は手分けして円香を探していた。しかし手掛かりがないのに見つけることはできない。山神にも焦りが出てきていた。

「山神!」

 別行動していた明が道の向こうから走ってきた。片手にはスマホを持っており、誰か連絡を取っていたのかもしれない。

「明。何か成果はあったか?」

 山神の問いに、明は悲しそうに首を横に振る。

「ダメ...。とりあえず片っ端から連絡してみたけど、みんな心当たりはないって」

「そうか...。悪い、また探してくる」

 山神が振り返って走り出そうとした時、角から歩いてきた2人組にぶつかった。

「わりぃ...ってなんだ山神か」

「おー、養成校以外で会うの初めてだなぁ。デート?」

 2人組は火野、そして同じく養成校の1人、ひびき 和真かずまだった。2人とも都立第二高校に通っていて、仲がいいのか一緒にいることも多い。

「火野と響か。今人探してて急いでたんだ、悪いな」

 山神は2人に軽く挨拶してその場を後にしようとするが、それを火野が引き止める。

「おい待て。俺ら今暇してるところだったんだ」

「だからなんだ!」

 山神は少し苛立った様子で返答する。一方で火野はあまり表情を変えずに続けた。

「手伝ってやるよ。人探してるんだろ」

 想定していなかった言葉に、山神は驚く。その姿を見た火野は顔をしかめた。

「なんだよ...。嫌なら手伝わねぇぞ」



 2人は火野の申し出をありがたく受け、ざっくりと状況を説明する。死霊魔術云々はあえて話さず、円香が居なくなったということを伝える。すると火野は響の方に目をやった。

「とりあえず和真。アレやれよ」

「えぇー。俺も手伝うの?」

 しかし火野に睨まれると、面倒そうに鞄から何かを取り出すと、地面に敷いた。白地のマットのようなものに、十字に線が引いてある。それを一緒に取り出していた方位磁針を見ながら、角度を調整した。

「俺戦闘用の魔術苦手なんだよねー。養成校で1番弱いと思うよ。だから俺が魔特で目指すのは探知部門。魔術で目的の物を探す専門家。あ、こっちが北ね」

 いまいち理解できていない2人をよそに、響は十字線の端を指で示す。見かねた火野が補足する。

「要は今からお前らが探してるやつを見つけてくれるってことだ」

 響はうんうんと頷くと、今度はメモを取り出した。

「探してる人の特徴をできるだけ詳しく教えて。見た目から性格、好きなものとか。見た目は写真があるといいかなぁ」

 明と山神は、円香の写真を見せながら特徴を言う。

「身長は155くらい、体重は分からない。真面目だけど冗談が通じない感じではないな。明るい普通の女子って感じだ」

「それから数学が凄い苦手!運動神経もあんまりよくないけど、それが逆に男子には受けてる。真面目だけど少し抜けてる所も男子に受けてる。それから...」

「待て待て!それ関係ないだろ」

 脱線しそうになった所で山神は思わず明を止めようとするが、響は意外にも肯定的だった。明の言っていた部分もしっかりとメモを取る。

「なるほどねぇ。確かにめっちゃ可愛いね。見つけたら今度紹介してよ」

「お前な...こんなので本当に分かるのか?」

 軽口を混じえながら進める響に、山神は疑いの目を向ける。しかし彼はペースを変えない。

「人が持つ雰囲気がそれぞれ違うように、魔力だって特徴があんのよ」

 響はそう言ってメモを1枚破りとる。そこにはいつの間にか魔法陣が描かれていた。

「...まあ見てなって」

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