5章 第12話 失意の結果
帰宅した円香は、落ち込んだ様子で部屋のベッドに寝転ぶ。明たちの誘いを断るほど期待していただけに、ショックも大きかった。
(なんでダメだったのかな...)
ため息をつき、円香は机の方に目をやる。大切に飾ってある写真立ての中には、笑顔で写った両親の姿があった。
(剣次が言うには、私はあの日2人と一緒に出掛けてた。調べてみたら2人は、不意をつかれたとしても簡単に殺されるような人たちじゃなかった。きっと私を庇ったからだ)
山神に自分が現場にいた事を打ち明けられた後、円香は事件のことについて調べていた。ネットにはいまだに犯人に対する推測や子どもを庇った親の美談に溢れている。しかしそれと同じくらい、優秀な魔特隊員を失ったことの原因を円香にあるという意見も多かった。
(私は...2人に謝らなきゃ。そして、ちゃんとやってるって伝えるんだ)
円香は次の機会を願いつつ、目を閉じた。
しかし翌朝、朝食を食べながらニュースを見た円香は昨日よりも大きなショックを受ける。流れていたのは、近くで詐欺の常習犯が捕まったというものだ。亡くなった人、遠く離れてしまった人に会えると謳っては、幻術で騙して金を巻き上げていた。あの占い師だ。
(え...。あの人って)
「ちょっと、円香ちゃん!?」
円香は箸を置くと、引き留めようとする祖母に短く答えると、部屋に戻っていった。
「ごめん、おばあちゃん。今日は学校休むね」
部屋に戻った円香は、スマホでニュースのことを調べる。もちろん検索の結果で出てくるものは、テレビでやっていたものと同じだ。自分の勘違いではと様々なニュースサイトを見比べるが、もちろんそこに大きな違いはない。
(そんな...)
円香は力無くベッドに座り込む。騙されていたことよりも、両親に会うという唯一の方法と思われたものを失ったことが、何よりも円香の心に重くのしかかった。
(亡くなった人に会うには、多分死霊魔術しか方法がない。でもどうすれば...)
円香は何かにすがるように、机の上の本に手を伸ばした。たまたま1番手前にあったものを手に取る。まだ目を通していなかった、追加で借りた1冊だった。
「これ...読んでなかったな」
円香は呟くと、ページを捲る。内容は他の本とは違い、死霊魔術の使い方が事細かに書かれていた。彼女は思わずベッドから起き上がる。
(なんだこれ。難しいのに内容が分かる。直接頭に流れ込んでくるみたい)
1度諦めかけた円香の目の前に、光が見えた瞬間だった。
(そっか、私が死霊魔術を使えばいいんだ)
普段の円香なら、目的のために違法なことをしない。しかし、もう彼女はこの想いに抗うことができなかった。
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