5章 第6話 魔術対抗
円香が居なくなったあと、元の場所に残っていた占い師は、顔を歪めて舌打ちをする。
「チッ、話が違う。対象は普通の女子高生だって聞いていたのに」
占い師は立ち上がると机と椅子を乱暴に片付けだす。
(こっちの素性知ってて話持ちかけてくるなんて、私が言うのもなんだけど怪しい。その分報酬もいいけれど)
(まあいいわ。いずれにせよあの子は明後日また来るだろう。報酬とは別に稼がせてもらう)
占い師は円香が帰っていった方向を見ると、不気味に微笑んだ。
「だから魔術では...おい、火野!」
魔特養成校の講師、入江は丸めたテキストで居眠りをしている火野の頭を叩いた。周りからはクスクスと笑い声が起きる。
魔特になるには、実技だけではなく筆記の試験も合格しなくてはならない。そのため養成校では、数は多くないが筆記の授業もある。
「まったく...。じゃあ火野、お前自分の魔術で火傷したことがあるか?」
眠そうな火野は目を擦りながら答える。
「ないっすよ」
「それは何故だ?」
「なんでって...。俺が強いから」
すると1人の生徒が思わず吹き出す。火野はそれを睨みつけると、その生徒は口を抑えた。一方で入江は頭を抱える。
「今度からは学力も推薦基準に入れとかないとな。じゃあ御堂、どうしてだ?」
真剣にメモを取っていた閃は顔を上げると、少し間を置いて答える。
「僕達の体内にある魔力のおかげです。正確に言うと、魔術対抗ですね。魔力を持つ全ての人は魔術に対しての対抗力を持っています。特に自分の持つ魔力に近い性質のものには高い効果があるので、自分の魔術では基本傷つきません」
教科書のような完璧な答えに、何人かの生徒は口を開いて感心する。入江も満足そうに頷いた。
「そうだ。魔術には、モノとしての性質は宿る。火の魔術なら紙も木も燃える。しかしライターの火は触れば火傷するが、魔術で作ったあの程度の火なら火傷はしない。痛みはあるがな」
入江の説明に、火野は頭を捻る。一方の山神や閃は小さく頷いた。
「少し複雑だが、要はみんな魔術に耐性があるって事だ。特に魔力量が多いと、この対抗力は大きい。まあ一般人ではそんなに差が出ないけどな。...おっと時間か。試験にもよく出るし、実践でも重要な部分だから復習しとくように」
魔術対抗は、魔力そのものが持つ力と考えられている。そのため、建物に魔力を持たせることで魔術で壊れにくくする技術なども進んでいる。世界中で魔術によるテロが増えていることも一因になっていた。
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