5章 第3話 御堂の天才③
「ねぇ、明...」
ハンバーガーショップを諦めた明と絵理の2人は、新たな目的地を求めて移動していた。
先程から不安な表情の絵理が口を開く。
「どしたの。気分でも悪い?」
「ううん。さっきハンバーガーショップにいた人の事なんだけど...」
すると明は何か引っ掛かっていたものが解決したような反応を見せた。
「御堂君に似てたよね」
その瞬間、絵理の表情が凍る。絵理は先ほどの御堂彩を閃と勘違いしていた。今の彼女にとっては一番聞きたくなかった言葉だ。当然閃がそんなことするわけないと思っているが、一度思い込んでしまうとなかなか強く否定できない。
「いや...御堂君はあんなことしないと思うけど...」
その反応を逆に明が疑問に思ったようだった。
「そりゃそうでしょ。あれさ、きっと御堂君のお兄さんだよ。御堂...彩だっけかな」
「え?お兄さん?」
絵理は混乱した様子を見せたが、一呼吸置くとようやく理解したようだ。短時間に感情の揺れ動いている絵理をよそに、明は続ける。
「一高の友達に聞いたんだけど、色んな意味で有名らしいよ。絵理もさっきの見たでしょ?」
絵理は先ほどの光景を思い出す。女子高生を侍らせている男子高校生の姿は、確かに普通では無いように感じられる。
「御堂君に似てるって言ったけど、すっごくカッコいいらしいよ。一高でもトップクラスに頭良いらしいし」
彩のことをあまりよく知らない絵理は、明の言う噂から閃を思い浮かべる。まだ会ったことのない彼のイメージは、まさにそんな感じだった。
「でもさっき見たとおり、慕う女の子を5~6人近くに連れてて、1ヶ月と同じメンバーな時は無いんだって。授業も真面目に出ないみたい」
「そうなんだ...」
しかし聞けば聞くほど閃とは真逆だ。生まれつきの性格が違うのか、それとも彼の周りがそうしてしまったのか。
理由は気になるが、そんなことを考えても絵理に答えを出せるわけがなかった。何よりもその話を聞いて、思ったことが絵理の口からこぼれ落ちた。
「...好きになったのが閃君の方でよかった」
言い切ってからハッと気づくが、その一言を逃す明ではなかった。満面の笑みで絵理を見つめる。
「あらあら。こんなにも素直にさせてしまう御堂君はすごいねぇ」
別に隠しているつもりはないが、さすがに口に出してしまったことを恥ずかしく思い、絵理は赤面するのだった。
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