5章 第1話 御堂の天才
御堂と聞くと世間の人は優秀な人物を思い浮かべる。もちろん、それは様々な分野に優秀な人物を輩出しているからだ。幼少期から天才と呼ばれていた者も少なくないという。才能があることに加え、御堂という名家のバックアップを受けられることも大きいのだろう。
御堂閃はそんな天才達の中では、飛び抜けた才能を持つわけではなかった。しかし、その人当たりの良さと努力家であることは、彼を御堂に相応しい人物だと思わせるのに十分だった。そして、何よりも彼の評価を上げているのは、身近にいる本当の天才の存在だった。
12月も後半に入り、定期テストも終わったある日。冬休みを目前に、生徒達の様子も
明るい。そんな中、深刻そうな表情で答案を見つめる女子生徒がいた。✕の多い答案には42点の文字。第三高校では赤点ではないのだが、「赤点予備軍」として放課後に特別授業を受けなければいけない点数だ。
女子生徒は答案を一度閉じてから深呼吸をし、もう一度恐る恐る開こうとする。
「何回見ても変わんねぇよ」
そんな彼女に山神は呆れたように話しかける。そんな光景に明と絵理も思わず苦笑いだ。
「そんなこともあるって円香。私らはいつものハンバーガーショップで待ってるからさ」
「円香ならすぐに解放してもらえるよ」
円香は親友達の優しい言葉を涙目で受け止めると、私頑張ると言うように大きく頷いた。
「それにしても円香が特別授業とはね。ククク、やつは我ら四天王の中でも最弱よ」
明は意地悪そうな笑みを浮かべるが、絵理は呆れたように返す。
「円香は数学が悪かっただけでしょ。他の教科は平均超えてたし。明はほぼ全教科予備軍ラインぎりぎりだったのに...」
「くっ、省エネだし...」
言い訳を重ねる明を絵理が攻める。もう少しで明のメンタルが折れそうなところで、2人はよく集まっているファストフード店に着いた。明は逃げ込むように中へと入ったが、いつもと少し雰囲気が違っていた。
「...なんか賑やか?」
後に続いた絵理も不思議そうに首を傾げる。しかし賑やかというよりも騒々しいという表現が合っていた。2人はそちらの方に視線を移すと、2つ分のテーブルを占領するグループの姿が見えた。4、5人の女子高生と中心に第一高校の生徒と思われる男子高校生が座っている。周りを全く気にしない様子でゲラゲラと笑い、盛り上がっていた。
「うわっ、なんかヤな感じ。場所移そっか」
その様子に明は不快感をあらわにする。しかし、絵理はそのグループの方をじっと見つめていた。
「...絵理?」
再び声を掛けられ、絵理は我に返る。
「う、うん...」
店から出るギリギリまで、絵理の視線がそのグループを離れなかった。正確に言うと、そのグループの中心に居た男子生徒から。
(あれ、御堂君...じゃないよね?)
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