4章 第26話 進む思い
養成校の試験結果発表は、意外にもあっさりとしたものだった。
「なんだ。結局は全員合格かよ」
張り出された結果を見て、火野はそうこぼした。周りの養成校生徒からも、安堵の声が上がる。
「良かったですね剣次さん」
閃も少しホッとした様子で山神に声を掛けた。山神は閃に対して笑顔を返すと、張り出された結果の横で生徒達の様子を見ていた入江へと近寄った。
「ありがとうございました。...でも全員合格で良かったんですか?正直俺は...」
続く言葉を察したのか、入江は山神を手で制す。
「今掲示されている結果が全てだ。俺が思ってる以上に、みんなが1ヶ月で力を付けていた。山神、お前もだ」
入江は少し考える様子で間を開けると、さらに続けた。
「学園祭の時の動画を見させてもらった。光来が言っていた意味が分かったよ。贔屓するつもりは全くないが、あの魔術を使いこなすお前を見たくないと言ったら嘘になる。引き続きよろしくな」
少し驚いた顔をした山神だったが、入江の言葉に力強く頷いた。
「はい!」
この日の養成校は試験の結果発表のみで解散となった。帰り道、山神は養成校に残れるという安堵とまたもあの魔術に救われたという複雑な思いで頭がいっぱいだった。そんな山神の脇腹に突然衝撃が走る。
「山神ってば!」
「うぐっ!?」
思わず変な声を出した山神は、衝撃を受けた部分を抑えて振り返る。そこには少し申し訳なさそうな様子の明が立っていた。
「ごめん、強く突きすぎた?」
「明か...。いや、大丈夫。ちょっと考え事しててさ。なんでこんな所に?今日帰り早かっただろ」
第三高校は昨日まで学園祭だったため、今日の授業はいつもより早く終わっていた。山神は養成校があるため、少し時間を潰してから第二高校に来ていた。
「えっと、友達と遊んでて。たまたま通りがかったんだよね。それよりも...試験どうだったの?」
明は見せたことのないような不安な表情で尋ねる。しかし山神が一言大丈夫だと伝えると、不安な表情は一転し、光るような笑顔を見せた。
「よかった!」
釣られて顔をほころばせ、一緒に帰る2人だったが、山神は何かいつもと違うぎこちなさを感じていた。
(...気のせいかな?)
〜5章に続く〜
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