4章 第22話 力の差

 起き上がった山神と男性は正面から対峙する。緊張した様子の山神とは対照的に、男性は不敵な笑みを浮かべていた。

 先に動いたのは山神だった。彼は両手に風のクナイを作ると、男性に向けて飛ばす。しかし簡単に衝撃の魔術で打ち消されてしまった。

(俺の魔術じゃ簡単に消されてしまうか。でも衝撃がここまで来ないってことは、射程距離は短い。このまま近づかせなければ...)

 山神は再び風のクナイを作り出すが、男性はそれを見て笑う。そして山神の考えを読んでいるかのように話し始めた。

「近づかせなければチャンスはあるってか。じゃあこれでどうだ?」

 男性は両手を広げ、あやつり人形を糸で引き寄せるようなジェスチャーをする。すると山神は急に何かに引っ張られるような感覚を覚えた。

「な、なんだ!?」

 男性がさらに続けると、山神の足は踏ん張ることができずに、身体が男性の方へと引き寄せられた。山神は反撃を試みるが、既に男性が目の前まで迫っていた。彼の衝撃の魔術の射程圏内だ。咄嗟に風のクナイをぶつけようとするが、男性の魔術の出がそれを上回った。山神は衝撃の魔術をもろに受ける。

「ぐっ...」

 先ほどと同じように山神は吹っ飛ばされる。男性は、今度は近くのロッカーを引き寄せると、目の前に来たそれを衝撃で吹き飛ばした。勢いのついたロッカーが山神と明に向かう。山神はなんとか身体を起こすと、横向きの風を発生させ、向かってくるロッカーの進行方向を変えた。ロッカーは壁へとぶつかり、派手な音を立てる。

「あんまり音出るとさすがに誰か来ちゃうか。じゃあそろそろ終わりだな」

 男性は2人の方へと近づいてくる。山神はなんとか近づけさせまいと風のクナイを飛ばすが、男性が手を払うとそれらはさっきと同じく衝撃の魔術で打ち消されてしまう。

 ついに男性は2人の目の前に来ると、山神は庇うように明の前に出る。男性のことを睨みつけるが、山神に打開策はなかった。

「このコも可哀想に。非力なヒーローだったな」

 男性は笑いながら手を上げると、2人に向けて魔術を放った。

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