4章 第19話 運命の出会い②
「「明が戻ってこない?」」
交代時間となり、教室に戻ってきた山神たちは声を合わせる。彼女を送り出したクラスメイトは、嬉しそうに頷く。
「そう!かなりいい雰囲気だったから、時間も忘れてるのかな〜」
明が交代に入った時の話は聞いていたが、それだけに気になる部分が山神にはあった。クラスメイトの発言に円香は珍しくムキになる。
「そんな...いくら夢中になってても明は戻ってくるよ。どれだけ一生懸命だったか忘れたの?」
これには山神も同意だ。確かに明は時間にルーズな面があり、恋愛関係の話題を好むことから、自分でも夢中になってしまうことは否定できなかった。だが、学園祭に向けての思いを見てきた側からすると、そのことで戻らないとは考えづらい。
さらに引っかかるのは、その男性についてだった。彼は昨日来ていたと言っていたらしいが、そんなに目立つ風貌の男性を見た記憶が山神にはなかった。おまけに今日周りで見ていた他のクラスメイトたちも容姿をよく覚えていないと言うのだ。
「ちょっと探してくるよ。確かに円香が言うとおり連絡もないのはおかしい」
「じゃあ私と円香も行くよ。やっぱり置いていったのよく思ってなかったのかも...」
絵理は心配そうな顔をするが、山神は笑ってそれはないと言い切る。
「そんなことないさ。2人は明が戻った時のために残っててくれ」
山神はそう残すと、明を探しに人混みの中に消えていった。
一方、明は男性にリードされるまま学園祭を回っていた。照れもあるだろうが、いつもの様に元気ではなく、大人しい様子だ。
(なんでこんなにドキドキしてるんだろ。なんか頭もボーッとするかも)
「明さん」
そんなことを考えている時に話しかけられ、明は心を見透かされたようで驚く。
「は、はいっ!」
「いい返事だね。ちょっと行きたいところあるんだけど、いいかな?」
明は黙って頷く。男性は満足そうに微笑むと、明の手を取って歩き出した。2人は段々と人気の少ないところへと向かっていく。
辿り着いたのは学校の備品等が保管されている倉庫のような場所だった。普段から生徒が寄る場所ではなく、それは学園祭が行われている間も例外ではなかった。
「ここは...?」
「ここは三年生でも知らないまま卒業する人が多い場所なんだ。二人きりになるには最高の場所」
男性は明の耳元に顔を寄せると、囁いた。
「誰かに見られると困るからね」
そしてそのまま明のことを突き飛ばした。
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