4章 第17話 そして本番へ③
学校へ戻った山神は、学園祭でワイワイと盛り上がる他のクラスを横目に、自分のクラスの元へと向かっていた。もちろん普段よりは賑やかだが、そこまで人は入っていないようだ。
(そんなに盛り上がってないのか?)
山神の頭にはそんな不安が過ぎる。ここで学園祭まで失敗していたら、たまったものではない。自然と歩くスピードが上がり、自分のクラスまで辿り着く。
「なっ...?」
山神の目に映ったのは、心配していたものと真逆の光景だった。クラスメイト達は慌ただしく動き、客は教室の外まで列を作っている。周りのクラスと比べると明らかに人が入っていた。
すると同じタイミングで明が教室から出てきた。彼女は先頭の人達を教室の中に案内して汗を拭うと、驚いて教室の前で止まっていた山神に気づく。
「山神!」
「明...すげぇ人だな」
驚きもあってか、山神は気の抜けた返答をする。明はそんな山神の腕を取ると、教室の中へと引っ張って行った。
「感心してる場合じゃない!あと色々と聞きたいこともあるけど、とりあえず手伝って!」
そこからは目の回るような忙しさだった。直前までクオリティを高めていたことと、開始早々入ってくれた人のクチコミが大きかったようだ。おかげで大繁盛ではあるが、想定以上だった。人手は足りていないが、他のクラスを見て回る時間を作るために交代制を崩すわけにはいかない。その結果、指示を出していた明はもちろんのこと、山神や円香、絵理もほぼ休みなく対応していることになってしまった。
「ごめん、3人とも。忙しかったのもあるけど、見て回る時間あげられなかった。明日は行ってきていいからね」
明は申し訳なさそうに頭を下げるが、円香は首を横に振る。
「それは明も同じだし...。明日は一緒に見て回ろ!」
「早く終わるけど3日目まであるわけだしね」
円香と絵理の言葉に、明の目が少し潤む。
「ありがと。山神も疲れてたのにごめんね」
「いや、むしろちょっと気が紛れたよ」
山神は反射的に出てしまった言葉に気づき、慌てて誤魔化す。
「そ、そうだ!明日見て回るなら閃を誘ってみるよ。あいつも楽しみにしてたから」
「み、御堂君を!?お、おしゃれしてこなくちゃ...」
「絵理、私達は制服だよ」
取り乱す絵理に円香が冷静につっこむと、女子3人に笑いが起きる。山神はその様子を見て、内心ホッとした。せっかく上手くいっているのに、ここで盛り下げるのは本意ではなかった。
「明日も頑張ろうな」
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