4章 第15話 そして本番へ①

 試験の当日、会場である都立第二高校にいち早く着いていた山神だったが、その様子はソワソワと落ち着きがなかった。同じく早めに到着していた閃は心配そうに見つめる。

「大丈夫ですか?」

 しかしそういう彼も少し緊張しているようだった。いつも柔らかい表情が今日は少し固めだ。

「あぁ...さすがに緊張するな」

 試験は1人ずつ行われ時間もかかるため、前もって開始の時間が指定されていた。山神は午前中の早くから、閃は昼前ぐらいの予定だ。

「緊張のしすぎも良くありません。いつも通りにやって、文化祭に向かってくださいね。僕も終わったら遊びに行きますから」

 山神は頷くも、やはり緊張をほぐすことはできなかった。閃の心遣いは嬉しかったが、正直耳に入っているだけで、心に届いてはいない。それほどまで彼にとっては大事なものだった。



 少し時間が過ぎ、山神は講師である入江に名前を呼ばれる。会場の広い体育館。その真ん中に、入江は1人真剣な表情で立っていた。

「この試験、結果次第ではどうなるか分かってはいるよな?」

 入江は淡々と確認するように言う。山神が無言で頷くと、入江は特に言葉を続けなかった。

「では試験を開始する。まずは魔術の継続から!」


 実技試験は5項目行われる。継続、瞬発力、技術、威力そして防御。

 継続は魔術をいかに出し続けられるか、瞬発力は魔術発動までのスピード、技術は魔術のバリエーション、威力は魔術の攻撃力、そして防御は魔術での防御力を測るものだ。

 技術的な面では申し分ない山神は、瞬発力、技術に心配はなかった。継続も高燃費によるハンデはあるが、やりようによってはカバーできる部分だ。問題は魔力量がもろに反映される威力と防御だった。


「じゃあ次は威力だ。俺に向かって魔術を撃ってこい」

 山神は風のクナイを作り出す。実践では多用するものだが、陽動目的に使うことも多くそのままの威力は低い。

 山神はクナイを握ると、そのまま反時計回りに体を回転させた。

「これで...どうだ!」

 そしてその勢いでクナイを入江に向けて投げる。体を回転させて勢いを付けたこと、さらに投げる寸前にさらに風を纏わせることで、クナイは真っ直ぐ飛んでいく。入江は防御魔術を出すが、ぶつかった瞬間の衝撃で体は軽く宙に浮き、何歩か後ろに吹き飛ばされた。

「...なるほど」

 入江は驚いた様子で山神を見ると、すぐに表情を戻した。

「最後、防御の魔術だ」

 最後の項目を前に、山神は軽く目を閉じて深呼吸をした。


「お願いします」

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