4章 第14話 運命の明日
「...完成した!」
クラス中から歓声があがると、明はホッとしたように息を吐いた。文化祭前日、山神たちのクラスは何とか準備を間に合わせることができた。クオリティもほぼ当初の予定通りだ。
「やった!」
円香と絵理は思わず明に抱きつく。明は2人を引き剥がすが、満更でもない様子だ。そして再度表情を引き締めると、クラス全体に呼びかけた。
「みんな本当にありがとう。本番は明日からだけど、よろしくね」
明日から文化祭ということで、1日準備期間となり授業はなかったが、山神たちは最終確認を終えると、早めに解散することになった。
明日への期待や不安などを口にしながら、クラスメイトたちはそれぞれ帰っていく。連日の準備で疲れていたのか、あっという間に残りは数名になっていた。
「...ふぅ。山神もありがとね。御堂君にもお礼言わないと」
明は山神に向けて言う。
「俺は何もしてないよ。それに明日の午前中は来れないしさ」
山神が答えると、明はそのことを思い出したのか残念そうな顔をする。
「そうだった。明日は大事な試験があるんだっけ...」
しかしすぐに顔を上げて山神を見つめると、自信ありげな表情に変わった。
「いや山神ならきっと大丈夫!練習時間削った私が言うのもなんだけどさ!」
その根拠のない励ましに、山神は思わず笑う。明はさすがに恥ずかしそうに顔をしかめた。
「ありがとう。明日終わったらすぐに手伝いに戻る」
(結局大きくは変わらなかったな)
帰り道、山神は1人空を見上げる。閃と火野との特訓にはより力が入り、始める前に比べれば間違いなく上達していた。精神的なものを意識したことで、魔術が安定したことも確かだ。
しかし、それでも合格ラインに届くかは微妙なところだった。もちろん課題となった部分では、閃や火野に到底及ばない。
(とはいえ、泣いても笑っても明日で決まる。全力を出すだけだ)
山神は自分を鼓舞するように拳を握り締めるが、表情からはどこか不安な様子が読み取れるようだった。
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