4章 第12話 仲直りまで④

 翌日、気まずさを感じる山神とは対照的に、明は普段通りだった。昨日の様子を見ていただけに、違和感すら覚える。

「あ、明。昨日は悪かった」

「......許す!」

 明はそう言って、山神の肩をバンバンと叩き、ハッハッハとふざけたように笑う。

「ところで文化祭の件だけど」

 山神が切り出すと、急に明の顔から笑顔が消えた。続けようとする山神を遮って口を開く。

「いやっ、それはもういいよ。適当にやって、適当に終わらせよう」

「待てよ。そういうわけにはいかないだろ」

 しかし明は山神の言葉を気にもとめず続けた。

「頑張るとかさ、キャラじゃなかったよ。私は適当に生きるのが性に合うっていうかさ」

 並べられた言葉が本心ではないことは、山神には分かっていた。それだけに、そう思い込もうとしている事が伝わってくる。

 山神は明の両肩を掴んだ。突然の行動に明の身体がピクンと跳ねる。

「ならこれでダメならそうすればいい。お前がやらなくても俺はやるからな」

 戸惑った表情のまま固まっていた明だったが、山神の真剣な眼差しに、観念した様子でため息をついた。

「...分かった。円香に何聞いたか知らないけど、やる気になってるのを無視するわけにもいかないからさ」

「よし。やろう!」

 満足そうに笑って準備に取り掛かる山神を見て、明は思うのだった。


(...なんでそんなに輝けるのかな)



 閃の提案は効果的だった。準備のスピードは上がり、クラス全体のモチベーションも高まる。しかし今まで遅れていた分、当初のクオリティを目指すにはまだ時間がかかりそうだった。

「あと2週間じゃ間に合わないぞ」

「明日からもっと分担ちゃんとできればスピードもっと上がるって」

「ちょっと私家で構成考えてくる」

「なんとかなるっしょ」

 手を動かしながら騒がしいクラスメイトの様子を見て、明は首を傾げる。明らかに昨日までよりもポジティブな発言が増えていたからだ。

「なんで...?」

 明が1人呟くと、それに気づいた絵理が答えた。

「みんなもなかなか進まなくてもどかしかったんだよ。明が頑張ってたのは知ってたしね。さすが御堂君...!」

 最後にハートを浮かべる絵理に、明は無言でチョップを入れる。


「頑張ろ、明」

 頭を抑える絵理の隣に居た円香が笑いかけると、明は力強く首を縦に振った。

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