4章 第6話 特訓開始①
「しっかり試験するみたいですね。突然だったので、もっと軽い感じかと思いましたが...」
閃は配られたプリントを見ながら呟く。そこには試験の内容について細かく書かれていた。他の生徒たちとくらべると落ち着いてるが、その眼差しは真剣だ。
「なんだっていい。どうせ合格しなきゃ養成校クビなんだろ?」
一方の火野は大して読まずにプリントをクシャクシャに丸めた。そして山神に目を向ける。
「1番ヤバいのはお前だろ山神。分かってんのか」
「分かってるよ」
山神は顔をしかめる。それは山神自身が1番よく分かっていた。試験には苦手とする魔術も含まれていたからだ。
「そもそも高燃費の俺の苦手とみんなの苦手じゃ訳が違う。もし全ての項目で一定水準以上を求められるとしたら、現状俺はかなり厳しいかもしれない」
「まあそこで止まってしまっても仕方ありません。あと1ヶ月あるわけですし、一緒に特訓しましょう。僕たちも協力しますよ」
閃は明るく言ってのける。それに火野はワンテンポ遅れて反応した。
「僕たち?なんで俺も含まれてんだよ。お前らで勝手にやりゃいいだろ」
「そうですか...残念です。強力な魔術対策に火野さんが居てくれるとよかったのですが...。それでは水希さんにお願いしてみましょう」
閃がスマホに目線を向けると、火野は慌てて画面を手で遮る。
「なっ!?なんでお前が水希の連絡先知ってんだ!」
実は山神と閃の2人は、あの事件の後に水希のお見舞いに行っていた。ぜひお礼をしたいという彼女の申し出もあり、連絡先を交換していたのだ。もちろんこのことを火野は知らない。水希が「彼はこういうのあんまり好きじゃない」と言っていたのが理由の1つだ。
そしてきっと閃が火野に伝えなかったのは、こういう時の切り札になると考えていたからじゃないかと山神は思った。
(こいつ実は性格悪いんじゃ...)
しかしそれが今はなんとも頼もしい。
「分かった分かった。手伝えばいいんだろ。俺には必要ねぇけど、途中で人が欠けるのも癪だ。お前らには借りもあるからな」
火野はぶっきらぼうに言う。しかしそこには初めて会った時の様な感じはなかった。
「ありがとう2人とも。よろしくな」
こうして試験に向けての3人の特訓が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます