4章 第3話 話し合い(争い)
夏休みが明けて2週間が経っていた。都立第三高校では生徒にとって1年に1度の大イベント、学園祭に向けての準備で盛り上がっていた。山神たちのクラスでも例に漏れず、出し物をどうするかで激しい議論が起こっていた。
「なんでメイドカフェが最後まで残ってるのよ!」
明が叫ぶと周りの女子がそれに合わせ、そーだそーだと口を揃えて言う。
「うるせー。男の夢なんだよォ!」
同様に1人の男子生徒が叫ぶと周りの男子からも歓声が上がった。
「平凡な学園生活なんて送ってられるかぁ!」
「1年に1度なんだぞ!」
「頼むよぉ」
そんな悲痛な声も出るが、明を中心にした女子は反対の姿勢を崩さない。当然といえば当然である。なおも激しくなる争いを、山神たちは遠く離れたところで眺めていた。
(いつの間に男子全員の総意のようになったんだ...)
山神は呆れた様子で黒板を見た。そこにはお化け屋敷やカフェなど普通の候補も並んでいる。簡単に言うとメイドカフェガチ勢に巻き込まれた形だった。つまりヒートアップしているのは一部だけだったのだ。
「...彼らは放っておいて決めましょうか」
クラスの委員長はため息をこぼすと、何事もなかったかのように話を進めた。山神は男子代表として素直に申し訳なく思う。
「多数決がバラけていたので候補がたくさんありましたが、一番はお化け屋敷だったでしょうか?賛成の方は挙手をお願いします」
残った生徒のほとんどが手を挙げる。あの争いに終止符を打ちたいという思いもあるようだ。山神もその思いを込めて手を挙げようとした時、メイドカフェガチ勢の1人が泣きついてきた。気づくと争っていた連中がすぐ側まで来ている。
「頼む山神。明に対抗できるのはお前しかいない」
見ると男子陣の顔は暗かった。おそらく明に言い負かされたのだろう。確かに仲のいい山神なら少し話になるだろうが、女子陣からは余計なことをするなという圧力がひしひしと感じられた。ここであえて男子陣に味方できるものなどいるのだろうか。
「悪いけどこれは無理だろ...」
困り顔で断る山神に彼らは耳打ちをした。
「お前月見さんのメイド服姿見たくないのか?」
この言葉に一瞬動きを止める。その様子に男子陣は笑みを浮かべたが、山神は首を傾げるとボソッと言った。
「いや...?そもそもお前らが見たいだけだろ」
こうして山神を味方に付けられなかった男子陣はあえなく敗北した。
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