3章 第14話 事情聴取と

 魔特が祭り会場へと駆けつけたことで、花火は半分ほど打ち上がった所で一時中断となった。そして当然事件と関わりを持った山神たちは事情聴取を受ける。早めに解放された山神と違い、閃と絵理はなかなか戻ってこなかった。

「閃はまだ終わらないのか...」

 山神は呟くと様子を見てきた明が顔をしかめた。

「うん。やっぱ犯人?と接触したからかな。すぐに魔特呼ばなかった理由も聞かれてるみたいだし...」

 山神は頭を抱える。その事には山神も違和感を感じていた。閃ならば、すぐに魔特に連絡することの重要さが分かっているはずだ。呼ばなかったのはそれなりの理由があるに違いなかった。前に話していたこととも関係しているのだろうか。

「2人が戻ってくるのを待とう」



「それで...君たちはなんであんな場所に?怪しい女性を見てすぐに通報しなかったのはなぜ?」

 魔特隊員の質問に閃は口を閉ざす。現場の状況としては、魔術で事件を起こそうとした女性を霧崎が切りつけて逃走、その魔術は山神が無効化したことになっていた。閃たちはたまたま女性と鉢合わせ、巻き込まれたことにすることも可能だ。しかし閃は嘘を言うことはできなかった。真実を話すために口を開こうとしたが、先に話し出したのは絵理だった。

「わ、私が彼を誘ったんです。人が居なくて花火が良く見える所に行こうって」

 閃は驚いて絵理の方を向くが、絵理は構わず続ける。

「そしたらあの女の人が居て...。何をしてるのか見てたら、見つかって足元凍らされて動けなくなったんです。そしたら男の人が来て...」

「違いまー」

 ようやく口を開いた閃が訂正しようとするが、魔特隊員は2人を制止すると頷いた。

「分かった。あの魔術に簡単に気づけるとも思えないしね。何にせよ軽い怪我で済んで良かった。これに懲りたら立ち入り禁止場所に入らないことと魔特にはすぐ通報すること。分かったね?」

 最後に念を押して魔特隊員は2人にもう帰っていいと告げた。絵理は周りに魔特の関係者が居なくなったのを見ると、気の抜けた声と共にため息をつく。

「ふぅ。誤魔化せて良かった」

 しかし閃の表情は晴れない。むしろマイナスな感情の篭もった目を絵理に向けた。

「なぜ...嘘をついたんですか?僕はみなさんを危険に晒しました。絵理さんも怖い思いをしたでしょう。僕は自分で何とかできると、間違ったことをしてしまったのに」

 閃の言葉はだんだんと力を失う。絵理は最後まで聞くと、首をぶんぶんと横に振った。

「魔特に連絡しても、絶対に大丈夫だったかは分からないよ。そもそも、私のせいでああなったんだし...。それに...」

 絵理が閃を見る。その顔は何か確信のあるといった様子だった。

「あの時魔特を呼んでたら、きっと花火は上がらなかったから。だから間違ってないと思うの」


 その言葉に閃はハッとして顔を上げると、泣き出しそうな顔で呟いた。

「そう...かもしれませんね」


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