3章 第11話 一方その頃

 閃が魔術を目論む女性と接触した頃、山神と円香は霧崎の出店を探していた。

「あっ、あそこじゃない?」

 円香が焼きそばと看板を出す出店を指差す。祭り会場をほぼ周り終えても、焼きそばの出店は見当たらなかったため、間違いないだろう。

「霧崎さんは見当たらないけど、店の人はいるみたいだから聞いてみようか」

 山神の言葉に円香は頷くと、2人が近づくと店主は笑顔で呼び込む。

「いらっしゃい!」

「焼きそば1つ、あとここに霧崎さんっていらっしゃいますか?」

「はいよ。霧崎...亮か!そういえば高校生のカップル来たらサービスしてあげてって言ってたな。悪いね、あいつさっきまで居たんだけど...」

 店主は慣れた手つきで焼きそばを詰める。サービスなのかプラスチック容器には今にもこぼれそうなほど大盛りの焼きそばが盛られていた。2人はお礼を言うと店をあとにする。

「霧崎さん居なかったね」

 円香が少し残念そうに言うと、誰かが近づいてくるのに気づいてあっと声を漏らした。

「円香、山神!探したよ...ハァハァ」

 声の主は明だった。2人を走って探していたのか、息を切らして額には汗が浮かんでいる。てっきり3人でいると思っていた2人は、不思議そうな顔をした。

「閃と絵理はどうしたんだ?」

 逆に明は山神と円香を見ると首を傾げる。

「あれ、御堂君一緒じゃないの?おかしいなぁ」

 自分たちとはぐれた挙句さらにはぐれたということを聞いて山神は呆れた様子を見せるが、続く明の言葉に表情が変わった。

「実は......」

 明は2人とはぐれてからの話をする。



「閃がそう言ったのか!?そんなこと盛って話すわけないだろ!」

 山神の剣幕に明の顔が青ざめる。すぐに離れるように言われたということは、それほど危険が迫っていることを意味する。さすがに理解したようだが、明と絵理は普通の女子高生、冗談だと取っても無理はなかった。

「2人はここから離れてすぐに魔特に連絡してくれ」

「うん、分かった。...剣次、近くに魔力を感じるの。気をつけて」

 離れていく2人を見送ると山神は考えを巡らせる。閃の推測が正しいなら魔術師を見つけるか、魔術そのものを無効化するしかない。同様に考えた閃は魔術師の女性と接触していたのだった。

(とは言ったもののどうするか。明の話だと結構時間が経ってるはずだ)

 すると山神は地面の穴につまずく。危うく転びそうになって地面を見ると、不自然に盛り上がる場所を見つけた。それは閃が見つけていた魔術の起点だった。

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