3章 第10話 閃の戦い③

 現れた絵理に閃は気を取られる。その隙を逃さず、女性は氷の柱を出すと閃を吹き飛ばした。

「御堂く...きゃ!?」

 絵理は閃に駆け寄ろうとするが、悲鳴とともに動きが止まった。閃が顔を上げると絵理の足元が凍らされていた。徐々にふくらはぎから太ももの辺りと上に上がっていく。

「2人とも動かないことね」

 女性が2人を睨みながら手に力を込めると、絵理の顔が歪む。凍りつけたうえに、握りしめるように圧力をかけているのだろう。

「っ...痛い...」

「絵理さん!?」

 閃は魔術で絵理を助け出そうとするが、さらに絵理の顔が歪む様子を見て動きを止める。女性はまた意地悪そうに笑った。

「いい子ね。あなたが余計なことすれば、その子は一生歩けなくなるかもよ」

 絵理の顔から血の気が引く。しかし閃は優しく絵理に語りかけた。

「大丈夫ですよ絵理さん」

 同時に閃は手を下ろすと、女性の方を向く。

「これ以上抵抗しません。彼女の魔術を解いてあげてください」

 女性は少しの沈黙のあと、閃に向かって手を振るった。閃も同じように足元から凍らされ、身動きが取れなくなる。逆に絵理の氷は解かれ、その場に倒れ込んだ。

「男らしいのは嫌いじゃないわ。そっちの子はほとんど魔術使えないみたいだしね」

 女性は腕時計で時間を確認すると、少し遠くを眺めながら再び口を開く。

「花火まであと3分。どうせなら同じ時間に発動しようかしら。ここからなら空に打ち上げられる花火も、祭り会場で爆発するも同時に見れそう。お姉さんと一緒に特等席なんてついてるわね」

 閃は女性に気づかれないように辺りを見渡すが、この状況を打開できるようなものを見つけることができない。そんなことをしている間にも時間は過ぎていき、花火の時間が目前へと迫る。

「それじゃあカウントダウン。10、9、8...」

(ダメだ。すいませんみなさん、どうか無事で...)

 絵理は今にも泣きだしそうな様子で目を固く閉じる。閃も思わず目を逸らした。

「6、5、4......」




 しかし女性のカウントダウンの続きが聞こえてくることはなかった。バタっと誰かが倒れるような音を聞き、すぐに視線を戻す。そこには血を流して倒れる女性と木刀のようなものを持った男性が立っていた。

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