3章 第9話 閃の戦い②
閃は聞いた方面に近づくと立ち入り禁止の立て札とともに、ロープが張られた場所に辿り着いた。辺りが暗くなってきていることもあり、なんとも言えない不気味さが伝わってくる。
(確かに人が近づきそうにありません)
閃は静かにロープを跨ぐと、奥の方へと進んでいく。少し歩いて行くと、やや開けた場所に出た。そして瞬く魔法陣とその側の岩に退屈そうに座る女性を見つけた。思わず声をあげる。
「そこで何をしているんですか」
すると閃の存在に気づいた女性は飛び跳ねるくらいに驚くが、すぐに何事もなかったかのように表情を戻すと口を開いた。
「あら...かわいいボウヤね。ここは立ち入り禁止なんだけど、迷いでもした?」
しかし閃は口を結んだまま女性を睨みつける。女性はため息をついて続ける。
「...んなわけないか。どこまで分かってる?魔力吸収してるのは気づいてそうね。そこから何かしようとしてるのは分かった感じかな」
「はい。何が狙いなんですか」
女性は笑みを浮かべる。
「そうね、教える必要もないけどかわいくて賢い君には特別教えてあげる。どうせ見られた以上返すわけにもいかないからね」
女性はゆっくりと答え合わせをする。
「爆破魔術。この祭り会場を吹っ飛ばすの」
閃の表情が凍りつく。それは彼が思っていた以上に最悪な状況だった。既に十分過ぎる魔力は集められているだろう。今この会場で爆発など起きればどうなるか想像するのは難しいことではない。
「今すぐやめてください!どうなるか分かっているんですか!?」
閃は必死に訴えかけるが女性は気に留める様子はない。何か目的があるのだろうが、その過程で何が起きようと知ったことではないという感じだ。
「たくさん死ぬかもね。まあ私はお金貰えればそれでいいし、結局ボスに言われたとおりやってるだけだから。...それじゃそろそろおしまいってことで」
女性が前で手を払うと、大きなつららのようなものを作り出した。そして笑みを浮かべたまま閃に向かって飛ばした。閃はそれをかわすと女性の方へと駆け出した。間合いを詰め、掴み掛かろうと試みるが、氷の壁によって阻まれる。さらに地面から氷の棘を出すが、閃はそれを上手く足場にすると大きく飛び上がり、氷の壁の上から炎の刃を飛ばした。女性は悲鳴をあげてギリギリのところで避ける。もう先程の余裕な表情は消えていた。
「ちょっ...。聞いてないんだけど」
閃は余裕が無くなって立ち上がることができなくなっている女性をじっと見ると、魔法陣を指差した。
「観念してください。今なら大きな罪にもならないでしょう。魔術を止めてください」
女性は観念したようにため息をつく。その時閃の後方から誰かが近づいて来る音がした。2人の顔がそちらを向く。
「...あ。御堂君こんな所にいたんだね」
「絵理さん!?」
息を切らせた絵理だった。驚きを隠せない閃がいる一方、女性は絵理を見ると何か思いついたように再び笑みを浮かべた。
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