3章 第8話 閃の戦い①
その頃閃は祭りの方へと戻ってきていた。花火の時間が近づき、より一層賑やかさが増しているようだ。
(...やはり感じない。でも絵理さんは間違いなく魔力消耗でした。せめて証拠を見つけなくては)
閃は周りを見渡す。様子がおかしい人が見当たらないことからもやはり微量の魔力吸収のようだ。
(多くの人を巻き込もうとしているなら、この祭り会場を囲むように魔術の起点があるはず。それを壊せば...)
閃は魔法陣のように図形の中にいる人々に影響を及ぼす魔術だと考えていた。とは言っても祭り会場の大部分を囲む魔法陣を作り出すのはほぼ不可能だ。それに加え魔法陣ならば図形がはっきりと浮かびあがるため、誰にも気づかれないとも考えられない。そのため魔術の起点を用意し、それを角にする大きな図形を作り出すことで魔術を発動しているという読みだ。準備に時間はかかるが、祭りの会場は事前に決まっているため難しくはない。
辺りを注意深く探す閃は、地面が不自然に盛り上がっているのを発見した。慌てて駆け寄り土を軽く掘ると、魔力を帯びた石のようなものが埋まっていた。見つけた安堵からか閃はため息を漏らす。しかし手を伸ばすとバチッという衝撃と共に弾かれてしまった。
「痛っ」
思わず声に出てしまい、近く人の目が閃に向く。閃は慌てて口を抑えた。
(かなり強力な魔力を帯びている...。これじゃ壊すどころか触れもしない)
再び閃の表情が険しくなる。魔術を企てた者もこの起点の重要性は分かっていたようだ。これでは本人を見つけるしかない。
(魔特に連絡を...。でも...)
閃の目には楽しそうな人たちの姿が映る。魔特が来て避難となれば、当然祭りを続行できるわけがない。それはどうしても嫌だと思った。
(なんとかしてみせます。僕1人だとしても)
閃は近くの出店に走る。あまり客の来ていない焼きそばの出店だった。閃はその店主に話しかける。
「すいません!この近くであまり人が来ない場所ってありますか?あまり詳しくないもので」
店主は少し考えると思い出したようにあっと声を出して答えた。
「神社の陰に立ち入り禁止の場所があったな。でもそん...」
「ありがとうございます!」
店主が話し終わる前に閃はお礼を言って走り出した。そんな様子を見て店主と側で手伝っていた男性は顔を見合わせて首を傾げた。
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