2章 第13話 処罰の行方
「それで君たちがここにいる理由は分かるね」
山神、閃、火野の3人は魔特の本部に来ていた。普段は幹部クラスが働く場所のため、魔特になったとしても、初めのうちはなかなか入ることができない。3人の前には魔特7番隊隊長の陸園光来が座っていた。大きな仕事机には書類が山積みになっている。これだけでも忙しさが伝わってくるようだ。
水希を含む4人は、あの後すぐに現場に駆けつけた魔特によって保護されていた。気絶した女子生徒1人と男子生徒が3人だ。当然何があったのかと言う話になる。事情聴取が終わりその日は帰宅したものの、後日呼び出しを受けて今に至っている。
「波葉さんの件ですよね...」
山神が恐る恐る口を開く。光来は資料のようなものを見ながら頷いた。
「波葉水希、捜索願が出ていた都立第二高校の生徒か。事件性があると思われたため、警察からこちらに捜査権限が移っていた。こうなると許可の無い捜査は処罰の対象にもなりかねないんだが、そのことは知っていただろう?」
3人は俯いたまま聞いている。覚悟していたこととはいえ、実際に突きつけられるとキツいものがあるのだろう。
「養成校の評判も落としかねない行為だ。君たちの推薦の権利もなくなるかもしれない」
山神はぐっと拳を握りしめる。悔しさを表しているようだった。光来は軽く息を吐くと、3人の顔を順番に見た。部屋の中に緊張が走る。しかし続く言葉は3人の予想しないものだった。
「というのが他の魔特隊長の意見だった。私は反対だがな」
そう言うと光来は資料を丸めてゴミ箱へと投げた。3人は顔を上げて驚く。
「元はと言えばすぐに捜査に移れなかった我々の不手際だ。発見が遅れれば彼女の身がより危険に晒されていたかもしれない。それを救った君たちに感謝するならまだしも、非難する権利はないと思うんだがな...」
光来はため息をつくと頭を掻いた。その様子を見た山神も安堵のため息をつく。
「水希は...水希はどうなるんですか?」
火野が心配そうに問う。被害者とはいえ、違法な薬物を使用してしまったことには変わりない。
「少しの間入院してもらうことになるだろう。幸い依存性がそこまで高いものではなかったから。ただ力を得た感覚は残るからな、カウンセリングは当分続くだろうね。まあ悪いようにはしないから安心してくれ」
火野はホッとした様子で聞いていた。
光来の働きかけもあったおかげか、今回の件はなんとか許されたようだった。代わりに大量の課題を出されたが、『推薦が無くなるよりマシだろう』と言われてしまった。これには3人は反論することができない。
「光来さん。彼女を巻き込んだ組織のことって何か分かったのでしょうか?」
帰りがけに閃が光来に質問をした。彼はゆっくりと頷く。
「実は目処がついていたんだが...。先日幹部らしき男が拘束されているのが見つかった。体には刃物で切られたような痕があったそうだ」
「えっ...?」
「連続傷害事件の犯人はまだ捕まっていないからな。君たちも十分気をつけるように」
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