2章 第12話 突破口
山神の作戦に2人は耳を傾ける。
「1回きりだ。失敗したらもう通用しない」
2人は頷く。すると3人が隠れている隣のコンテナが大きな音を立てて吹っ飛んだ。
「どこに隠れてるの?」
閃が起こした砂埃も収まり、隠れた3人を探すように水希は攻撃を始めていた。
「まずい...。仕掛けるぞ」
山神の合図で3人はコンテナの陰から飛び出した。まず山神が得意の風のクナイで仕掛けた。スピードはあるものの簡単に防がれてしまう。そのまま距離を詰めようと試みるが、これも水の壁で阻まれてしまった。
「そんな簡単に近づけるわけないでしょ?」
水希は得意げに言うが、閃と火野の様子を見てぎょっとする。閃は先程と違い大きな火の鳥を、火野は何本もの炎の柱を準備していた。山神が水希の近くから離れると、2人はその魔術を水希に向けて飛ばした。水希が作る水の壁と激しくぶつかり合う。閃と火野は魔力を込めてなんとか魔術を保たせるが、それでも水希の魔術を突破できない。
「マジかよ...」
「まさかこれほどなんて...」
2人は歯を食いしばる。大きな水の壁は明らかに高校生レベルのものではなかった。しかしそれによってお互いの姿は見えない状況だ。
(今なら...!)
山神はぶつかり合う魔術で身を隠し、水希の背後に回り込んだ。正面に意識を集中しているため、後ろにまで水の壁は出来ていなかった。山神は風のクナイを飛ばす。当たりさえすれば吹き飛ばせる。
「残念でした」
しかし風のクナイは無惨にも水の柱にぶつかって消えてしまった。水希の笑い声が響く。
「背後からコソコソ狙うなんてね。そんなことだと思った」
水希の言葉を聞いた山神は...にやりと笑った。
「俺もこっちは防がれると思ったんだよ!」
その瞬間水希の足元に魔法陣が浮かび上がった。魔法陣からは凄まじい風が吹き上げ、水希の体が空中を大きく浮き上がった。
「閃、火野!」
山神が叫ぶと2人は空中にいる水希に狙いを変え、魔術を放つ。水希は地面から水の柱を伸ばそうとした。
「させるか」
山神は風を刃のようにすると、水の柱を切り裂いた。分離した上の部分だけで水希は盾を作るが、それだけでは前方しか守ることができなかった。閃の火の鳥が直撃すると、水の魔術は重力に負けて地面に落ち、水希もそのまま落下した。
「水希!」
火野はなんとか落ちてくる水希を受け止めた。山神の魔術もあってか、落下まで時間があったようだった。閃の魔術が直撃はしたものの、大きな怪我は無さそうだ。
「...ごめん...なさい。私...火野君とも不釣り合いで...。だから...」
水希は消えてしまいそうな声でなんとか話す。さっきまでとは別人のように雰囲気が変わっていた。薬の効果も切れたようだ。
「バカやろう。そんなの気にしたことねーよ」
火野は受け止めた腕に力を込めて言う。
「そう...だよね...」
水希は微笑むとそのまま目を閉じた。
「どうやら気絶してしまったようですね」
閃はそう言うと、大きく息を吐いて座り込んだ。
「なんとかなりましたね。さてそれにしても...ここ、どうしましょうか?」
山神は周りを見渡すと、そこには言い訳の聞きそうのない光景が広がっていた。遠くからは騒ぎに気づいた誰かが通報したのか、魔特のサイレンが近づいてきている。
「どうしようか」
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