2章 第10話 覚悟と探索②

「なんだこれ...」

 そこにはいくつかの人の名前らしきものと、住所が書かれていた。さらにここ2週間くらいの日付も書いてある。

「なっ」

 紙に書かれた内容を確認していると、突然火野が声を出して驚く。

「あいつの名前がある。波葉水希なみはみずき、間違いない」

「単純に読めば隣の住所と日付は対応するものでしょう。日付は明日、場所は...多分廃倉庫か何かの場所です。人気も少ないですし、これはビンゴかもしれませんね」

 3人は顔を見合うと頷く。

「何かしらに巻き込まれたのは確実だろうな。これも波葉さんが落としたものだと思う」

 しかし山神には腑に落ちない点があった。

(でも1週間もいないのに明日の日付なのか。それにあの時ふらついていたのだって)

 思考を巡らせるが答えは出ない。

「もっと手掛かりはねぇのか。これだけじゃ明日あいつがこの場所に来るかも分からないだろ」

 火野は周りをきょろきょろと見渡すが、他に手掛かりらしきものを見つけることはできなかった。

「仕方ありません。とりあえず明日行ってみることにしましょう。確か二高と三高はテスト前で早く終わると聞いていますから」

 そういえばと思い出す山神に対して、火野は忘れていたのか固まっていた。

 3人は翌日の昼過ぎに合流する予定を立て、この日は解散した。


 しかし翌朝、閃から山神の元に連絡が入った。内容は学校前に駅に集まって欲しいというもの。何事かと思いながらも山神は駅に向かうと、2人は既に集まっていた。火野はとても眠そうだ。

「いきなりどうしたんだ?」

 山神が閃に問いかけると、彼は昨日見つけた紙を見せてきた。

「昨夜ここにある人の名前を調べてみたんです。大体の人はSNS位しか引っかからなかったんですが、一部の人はニュース記事で出てきました。違法薬物の取引に関わったものです」

 山神は思わず紙を手に取り、印の付いた名前を調べる。閃の言った通りの記事が出てきた。

「一時的に魔術の能力を引き上げるものです。精神面に異常が出ることや悪用が可能なため、麻薬のように使用が禁じられています。そして...」

 再び閃が紙を手に取ると、なんと一瞬にして白紙に戻ってしまった。それを見た火野と山神が驚く。

「何か魔術がかかっていて、白紙のように見えるように細工がしてあります。おそらくこれは組織の資料でしょう」

「波葉さんが関係してるってことか?」

 火野は不安そうに聞いている。

「えぇ。そして取引だとしたらいつになるか分かりませんから、今から向かいましょう。学校はサボります!」


 目的の場所は閃の言った通り廃倉庫が集まっている所だった。取り壊す予定も無いのか、重機すら見当たらなかった。当然人気もない。

「静かだな...」

 都内とは思えないほど静かで、女子高生がいるとは到底思えなかった。3人は書いてあった住所の元に辿り着く。

「ここですね...」

 中に入るとコンテナの様なものが乱雑に置かれていた。そして真ん中には人影がある。

「水希!」

 人影を見つけた火野が叫んだ。よく見ると制服姿の少女が振り返った。

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