2章 第9話 覚悟と探索①

「探しに行くなら俺も行く」

 火野は乱暴に山神の手を払うと、険しい顔になる。

「お前には関係ない」

 しかし山神は食い下がる。

「1週間も帰ってないんだろ。お前1人で見つけられるのか」

 その言葉に火野は黙り込む。警察に対する必死な様子から、きっと散々探し回っても見つけられていないのだろうと山神は感じていた。

「魔特も警察も動けないなら俺たちで見つけるしかない」

「待ってください」

 そこで割って入ったのは閃だった。

「警察が動けないのは魔特に捜査権限が移ったからです。それは一般人にとっても同じこと。許可を得ずに動けば、処罰を受ける可能性があります。そんなことになれば養成校から魔特への推薦は受けられなくなりますよ」

 閃は真剣な表情で山神を見つめる。決して脅しではないことは2人とも分かった。

「...分かってる。でもそんなことよりあの子を見つける方が大事だ。無事だとしたら急がないと」

 山神の返答に火野と閃は驚く。魔特になるため、山神には推薦がいかに重要かを知っていたからだ。

「分かりました」

 閃は頷くと軽く微笑む。

「僕も一緒に探します。僕は魔特を目指してませんし、火野さんは当事者ですから」

 ここで魔特を目指してないという言葉に2人は突っ込もうとするが、それも予想していたのか、閃は間髪入れずに続ける。

「その事については今度話します。とりあえず僕たちが彼女を見た場所に行ってみましょう。何か手掛かりがあるかもしれない」

 火野はため息をつくと2人を交互に見た。

「...分かった。よろしく頼む」


「火野さんとこの子はどんな関係ですか?」

 第二高校に向かいながら閃が問いかける。写真を見てもかなり親しげだった。

「......彼女だよ」

 火野ぼそっと呟いた。

「えぇ!?」

 閃が驚くと、火野はムカッとする。山神がこの反応をしたら掴みかかられていたかもしれない。

「同じ二高の生徒だ。そして...あいつは養成校の最後の枠に選ばれそうだったんだよ。でも選ばれたのはてめぇだった。もちろんあいつの魔術に未熟な部分はあった。だけど高燃費のてめぇよりはマシだったんだ」

 沈黙が流れ気まずい雰囲気になる。火野が山神に敵対心を持っていた原因はこれだった。

「中途半端に才能持ってることをあいつは悩んでた。だから養成校に入って自分はできるんだと思いたかったんだ」

 才能がない人には贅沢な悩みだと思われるかもしれない。しかしできる人にも相応の悩みがある。きっと第二高校に入学できた彼女も、そんな悩みに押しつぶされそうになっていたのかもしれない。山神にもその気持ちが分かる気がした。

「それは誰もが持ってる思いでしょう。でも向き合っていかなければいけません。とりあえず彼女を見つけて話を聞きましょう」


 第二高校に着くと、薄暗くなってきていた。部活をしている生徒も段々と帰る準備に取り掛かっている。

「確か向こうだったな」

 山神が記憶を頼りに校庭の端を目指した。3人はぶつかった場所を見つけると、今度は彼女の向かった方向に向かった。閃は注意深く足元を見ている。

「...?これは...」

 すると閃が何かを見つけた。破かれたノートのページのようだ。そして何かが書かれていた。

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