2章 第6話 知りたいこと

 ニュースです。今朝未明、出血をしている男性がいると通報を受け警察が駆けつけたところ、中年の男性が何か鋭利なもので斬られているのが発見されました。男性はすぐに病院へと搬送されましたが、警察の調べによると男性は指名手配犯だった模様です。ここのところ他の指名手配犯や犯罪の容疑がかけられている者が同様な被害にあっており、警察と魔特は同一人物の犯行と見て、捜査を進めております。



 山神が魔特養成校に通い出してから1ヶ月が経とうとしていた。周りとのギャップに戸惑うことはあるが、すっかり慣れてきていた。今日は本来は授業がある日だったが、急に休みになっていた。そのため山神は学校を終えると、どうしようかと悩んでいた。そんな山神に円香が声を掛ける。

「剣次、今日は休みなの?」

「あぁ、急に休みになった。大人しく帰るかな...」

 すると円香の顔が明るくなる。

「じゃあ一緒に駅前に行こうよ!ちょっと行きたいところがあって」

「いいけど...」

 なぜ自分なのかという言葉をいう前に、山神は円香に引きずられるように連れて行かれた。


 2人がやって来たのは少し年季の入ったレストランだった。まだ夕飯時には早いからなのか、それともいつものことなのか、店内に他のお客さんがいる様子はなかった。

「すいません」

 円香が先に入ると、店員らしい中年の女性が出てきた。中も少し古くなっていたが、小綺麗で感じのいい店だ。

「いらっしゃいま......あら?円香ちゃん?」

「はい、お久しぶりです」

 円香と店員はどうやら顔を見知りのようだった。店員は近づいて来て続ける。

「本当久しぶりね。こんなに美人さんになっちゃって...。しかも彼氏連れだなんて!本当に...由紀達に見せてあげたかった」

 山神は「彼氏」の部分を否定しようと思ったが、最後の言葉に黙るしかなかった。由紀とは円香の母親のことだ。


「ここね。よく家族で来てたお店なんだ。さっきの店員さんはお母さんの友達で、お父さんを紹介した人なんだって」

 2人は席に着いて話し始めた。さすがに晩ご飯には早かったのか、テーブルには飲み物だけが置かれている。円香は2人を思い出しているのか、ニコニコと話しているが、やはりどこか寂しげだと山神は感じていた。

「それで行きたいところってここだったのか?久しぶりに店員の人に会いたかったなら分かるけど」

「ううん。それもあるけど聞きたいことがあって...7年前と5年前のこと」

 山神の表情が凍る。それは山神の父親と円香の両親が亡くなった事件のことについてだった。山神は首を横に振る。

「いや、俺も詳しくは知らない。俺の父さんは7年前に殉職、おじさんとおばさんとお前は5年前に事件に巻き込まれた。それだけだ」

 しかし円香は納得せずに食い下がる。

「お願い。もちろん辛い気持ちになるのは分かってるよ、でも...私は知らなくちゃいけないの」

 真剣な眼差しに遂に観念したのか、山神はため息をついた。

「...わかった。俺が知ってることは話すよ」

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