2章 第4話 歓迎の理由
他の生徒も組手を終え、山神の養成校の初日は終了した。それぞれ荷物などを持ち帰っていく。火野同様に他の生徒のレベルも高いものだった。そのうえ組手を終えてもピンピンしているあたり、さすが養成校に推薦された者といった感じだ。
「お疲れ様です、剣次さん。初めての授業はどうでした?組手でしたけど...」
帰り支度をしている山神に、閃が声を掛けた。山神は力なく答える。
「完敗だった。結局効いた魔術も先手を取ったやつだけだったしな」
しかし閃の反応は意外なものだった。
「そうでしょうか?火野さんの戦闘能力はかなり高い方です。魔術が全く通用しない人もいるでしょう。それに...」
山神は閃の後ろに何人か生徒がいることに気がついた。
「それに良い意味で期待を裏切られたと言いますか...。正直、剣次さんの魔力変換率が低いって話を聞いた時、かなり厳しいだろうと思っていたんです。でも杞憂だったようですね」
閃はそう言ってニコりと笑った。後ろにいた生徒たちは、山神を囲んで話し出した。
「火野相手に先制なんて」「やっぱり魔術を連発するのはキツいの?」「風のクナイ投げたところカッコよかったぜ」
どうやら組手を見て興味を持ったようだった。山神は安堵のため息をついた。
「それにしてもなんで俺に話しかけようと思ったんだ?周りの様子を見ても、かなり勇気がいると思ったんだけど」
帰り道が同じ方向だったため、山神は閃と一緒に帰っていた。
「それは...話してみたいと思ったからです。通り魔から友人を守った人と」
その言葉に山神は驚く。学生が通り魔の事件に巻き込まれたことは当然にニュースになっていたが、名前までは出ていなかったからだ。まして山神があの盾魔術を使ったことを知ってる者は限られている。
「なんで、それを...」
山神は震える声で尋ねる。閃は申し訳なさそうな表情で答えた。
「僕はあのとき現場にいたんです。パニックなるあの場で、見ていることしかできませんでした。そこでとっさに立ち向かったのが剣次さんでした。...御堂は魔特とも繋がりがありますから、情報をいろいろと。すいません」
さらに閃は続けた。
「だからこそ僕は、剣次さんが
「でもそれと魔術の実力は関係ない。俺は高燃費だぞ」
肯定されながらも、山神は反論する。養成校に推薦されるのは、魔特が欲しがるような優れた魔術センスを持つ学生だ。そのことを考えると筋が通らない。
「きっと光来さんは特別な何かを感じたんですよ。僕と同じように」
閃らしくない曖昧な答えだったが、彼は自信あり気な様子だった。
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