2章 第2話 歓迎と不歓迎

「はい。今日から入ることになりました、山神剣次です!」

 緊張しているからか山神は手本のような挨拶をする。それを見て少年は笑いだした。落ち着いてから話し出す。

「す、すいません。僕も生徒ですし、そんなにかしこまらなくても。はじめまして、御堂閃みどうせんって言います。これからよろしくお願いしますね」

 閃と名乗った少年も丁寧に挨拶を返す。しかし名前を聞いた山神の表情が変わった。

「御堂って...あの御堂?」

「その御堂です」

 山神の反応に閃は困ったように笑う。山神が驚いたのも無理はなかった。御堂と言えば、優秀な人物を多く輩出していることで知られる家系だ。それは魔術の分野にも当てはまり、魔特を指導する立場の人間もいたはずだ。

「でも親とか家柄とか関係の無いことなので。僕のことは閃って呼んでください。せっかくなら仲良くなりたいですし」

「そっか...よろしく。閃」

 閃は満足そうに頷く。ここに来て初めて話した相手が友好的だったことで、山神は内心かなりホッとしていた。



 しかし当然皆がそうではなかった。本来ならここに来る学生は都立第一、第二高校の生徒がほとんどだった。都立第三高校の生徒だというだけで、他のメンバーの目は冷ややかだった。そのうえ山神がどうやら高燃費だということを既に知っている者もいた。



「みんな集まったな。少し遅れて参加することになったが、魔特養成校への推薦の最後の枠で入った山神剣次だ」

 しばらく経ってから来た指導員に集められ、生徒の前で山神は軽く紹介された。しかしあまり歓迎されている雰囲気ではない。

 ある生徒が口を開いた。

「そいつ高燃費らしいじゃん。光来さんの推薦って聞いたけど、いったいいくら払ったんだよ」

 その言葉に数人の生徒が笑い出す。

「おい、火野。光来も明確な理由を持って推薦している。これから高め合う仲間だぞ。そういうのはやめろ」

「でもよコーチ。俺らは高いレベルで魔術の実践を行わなきゃいけないんだぜ。そいつは相応しいのか?」

 火野と呼ばれた生徒は続ける。

「だから今日の内容は組手にしてくれよ。それで俺はそいつとやる。みんなも実力がわかった方がいいよな?」

 周りではそうだと声が上がる。火野はリーダー格なのか、つられて頷いている生徒もいるようだ。一方で不満げな表情をしている者もいる。

「うーん...。山神がいいなら構わないが...どうだ?」

 指導員は山神の方を見る。

「...やります」

 真剣な表情で答える山神を見た火野は、意地の悪そうな顔で笑う。

 こうして初参加ながら、山神は突然組手をすることになってしまった。


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