2章 第1話 魔特養成校

 その日山神は酷く落ち着きがなかった。それもそのはず、今日は魔特養成校に初めて行く日だったからだ。

「今授業中だよ剣次。気持ちは分かるけど...」

 魔術実践の授業でたまたま隣になった円香に注意を受ける。そういう彼女も、魔力のコントロールのために浮かせていた小さな球はフラフラと絶え間なく動いていた。

「お前の方がコントロールぶれぶれじゃねぇか。そもそもなんでお前が落ち着かないんだよ」

「それは......なんでもいいでしょ」


 すでに授業は6限の終盤。放課後になると都立第二高校に集合することになっていた。山神が光来の誘いを受けてから二週間、手続きなどで少し待たされる形になっていた。今日から本格的に参加することになっている。

 魔特養成校は平日の放課後と休日に活動している。直接魔特への推薦枠があるのは確かだが、簡単に言ってしまうと塾の様なものに近い。魔特の試験に向けて、優秀な者達が魔術の実践と筆記を学ぶ場所だ。

(...魔特養成校か。一体どんな奴らがいるんだろうな)

 横で注意を続ける円香を流しつつ、山神は期待と不安が入り混じった表情で時計を見つめていた。


 放課後だが部活も当然行われている第二高校は活気に溢れていた。魔力の第二と言われるだけあって、外から見ても魔術関連の設備の違いが分かる。集合場所は実技棟となっていた。魔術実践室のような場所を想像していた山神は、実際にその場に行って驚いた。

「ひ、広い...」

 第三高校の広めの教室とは違う、どちらかというと体育館のような建物だった。当然内側の壁などは魔術の影響を受けないようになっている。中に入ると何十人もの学生が散らばっていた。それぞれ話したり、準備運動をしたり、退屈そうにスマホをいじったりしている者もいる。


 広さと緊張から山神がどうしていいか分からなくなっていると、突然後ろから声をかけられた。

「もしかして新しく入る方ですか?」

 振り向くと少し小柄で中性的な顔立ちの少年が笑顔で立っていた。

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