第12話 チャンス

「俺が...魔特...?」

 山神は目を見開いて驚く。高燃費は言ってしまえば魔術のエリートである魔特と正反対の存在、驚くのは当然だった。

「知っていると思うが魔特は国家試験を経て入らなくてはならない。私の一存で入れることはできない。おそらく君では筆記はともかく実技で引っかかるだろうな」

 魔特には警察、つまり公務員と同様に試験を受けることで入ることができる。凶悪犯と対峙する魔特では、筆記実技共に特に試験のハードルは高かった。

「ただもう一つ方法がある。魔特養成校で推薦を貰う方法だ。そこで実力が認められれば実技はパスできる」

 山神は首を傾げる。魔特養成校なるものがあることを初めて聞いたからだった。

「ああそうか...。魔特養成校は魔特を目指す優秀な学生が集う...塾みたいなものだ。筆記実技の対策を行っているんだ。最近出来たものだから知らなくても無理はないかもしれない。魔特も人員不足だからな、少しでも優秀な人材を求めている」

 そして懐から書類のようなものを取り出し、山神へ手渡してから続けた。

「養成校は推薦によって決めることができる。私は今年二人の権限を持っていてな、残り一人選べる。そして...山神、君を推薦しよう」

「なっ...!?本当...なんですか」

 光来は真剣な表情で頷いた。

「もちろん本気で目指すならの話だ。養成校に行くということは、君はより強い劣等感を感じるのは間違いない。それは君が一番分かっているはずだ」

「......はい。ちょっと考えさせてもらってもいいですか」

「ああ、書類に私の番号がある。決まったら連絡をくれ」

 そう言い残すと光来は病室を出ていった。彼はすぐに答えが出ないことを理解していた。



「魔特養成校...」

 誰もいなくなった病室で山神は一人呟いた。光来の言っていることはよく分かっていた。普通に魔特を目指してもどうしようもない、それだけにこの話は山神にとって唯一の方法だった。しかし当然養成校に入ることで必ず魔特に入れるわけではない。


「俺は......」

 窓から外を眺める山神の顔には、期待と迷いが混ざった複雑な気持ちが現れていた。





「隊長、彼で本当に大丈夫なんですか?あの魔術は確かに凄かったですが、高燃費の少年だなんて...」

「元々一人しか推薦するつもりはなかったんだ。大きな違いはないさ」

(それに...あれは決して偶然じゃない)

 やや不満そうな部下を他所に、光来は少し満足げに笑った。

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